研究課題/領域番号 |
15K12511
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩坂 正和 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 教授 (90243922)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 痛風 / 尿路結石 / 磁場効果 / 磁場配向 / 反磁性 / 磁気回転運動 / 尿酸結晶 |
研究実績の概要 |
H27年度は、痛風および尿路結石発症のモデル実験系の構築のため結晶作成条件の検討を進めた。磁場印加前の結晶形状をコントロールするため、尿酸の濃度、pH、温度等のパラメータを変化させた際の結晶化特性データを収集した。ここでは、密封した薄層ガラスチャンバー内に過飽和濃度の尿酸水溶液を浸透させ、温度ジャンプにより尿酸結晶析出の速度と結晶形状を制御することに成功した。 また、作成した微結晶を薄層チャンバーに密閉した状態で、電磁石と組み合わせた顕微観察系で観測するための実験系の構築・改良も進めた。微結晶の反磁性の磁気異方性による回転の向き、および回転速度の解析を行った。特に、外見形状がほぼ球形である直径1ミクロン程度の尿酸結晶について、その磁場下での光散乱方向性について詳細なデータを収集し、ミクロンスケールでの反磁性的な磁気回転が生じないと考えられる条件において、ナノスケールでの結晶構造の磁気応答の挙動を高感度に検出することに成功した。 開発した磁場下での微結晶サスペンションの光散乱の異方性計測手法を発展させ、尿酸結晶やシュウ酸結晶の結晶成長プロセスにおける形状変化・構造変化の評価が可能な手法も構築した。 さらに、0.5Tの永久磁石からの磁力線の方向を周期的に変動させる装置を試作した。磁場をある速度で回転させ磁力線方向を変え続けることで,尿酸結晶成長の抑制の可能性を調べるための初期実験を行った。人体内で尿酸結晶が他の生体物質と複合化した状態での磁気回転挙動を観察するため、ガラス基板上に作製した幅数十ミクロンの間隙にあらかじめ炭酸カルシウム結晶の層を形成させ、その層の近傍に尿酸微結晶の成長層を導入したモデル実験系を構築した。このガラス基板に温度勾配を与えることで、微結晶成長層内での対流および外部磁場による勾配磁気力の効果を調べるための予備実験系も得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
痛風に関係する微結晶の結晶化条件の設定、微結晶の光散乱特性を磁気的に制御する手法を確立し、初年度の研究計画での予定項目を順調に遂行することができた。H28年度の研究計画に向け、その解決が必須となる課題の検討はクリアできた。なお、当初予定していなかった外見形状がほぼ球形である直径1ミクロン程度の尿酸結晶に関し、ナノスケールでの結晶構造変化の磁気応答が検出できたため、H28年度は引き続き、この球状の尿酸結晶の光散乱・磁気特性についても取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の研究では、磁場中での結晶化による結晶形状変化の計測・解析を進める。尿酸・シュウ酸の結晶化過程での磁場印加が,結晶の形状に及ぼす効果をリアルタイムで顕微鏡観察する実験を行う。また、結晶の析出過程における強磁場の影響を実時間スケールで観察・解析する手法を開発する。H27年度に開発した磁場中光散乱による微結晶の構造解析法を適用することで、結晶化過程での結晶のナノスケールでの構造影響を調べる。 各微結晶の磁気回転運動を解析して結晶の反磁性磁化率異方性の算出を行い、結晶軸に対し磁力線が変化し続けた際の結晶化速度の理論的な考察を行う。最後に、患部モデルによるマクロ評価システムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作製する予定の磁場印加装置のうち永久磁石の導入は行ったが、磁石を回転させる装置の設計に時間を要したため、その装置の作製部品費が次年度へ繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
痛風病変部位モデルに対し、永久磁石の回転による変動磁場を与えるための回転装置部品として使用する計画である。
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