研究実績の概要 |
生体は, 外界から暴露される様々な化学的あるいは物理的刺激を感知し, あらゆる環境に適応することが可能である.臨床の現場においては, 物理的な刺激を応用した医療機器 (あるいは医療手段; Physical medicine) が用いられ一定の成果が得られているものもあるが, その作用メカニズムの本体は意外にも不明な点が多い.申請者らも,微弱パルス電流刺激が,様々な疾患に有効であることを証明してきたが,電流刺激がどのような分子機序を介して,種々のシグナル分子に影響を与え,病態改善作用を示すのか,その分子基盤の実体は明らかにできていない.申請者らは、微弱パルス電流の条件検討の実験の過程で,高パルス頻度刺激の微弱パルス電流 (5,500 pps) が,電気不応答の非興奮性細胞の代表とされていた免疫細胞 (T lymphocytes) における過剰な免疫応答 (IL-2,TNFα,IFNγ) を劇的に抑制することを見出した。また,その作用は,電流刺激により産生されたhydrogen peroxide (H2O2) を介した作用であることが示唆された (未発表).大変興味深いことに,これまで,微弱パルス電流の作用として申請者が報告した生理現象の多く (Akt・p53・p38・AMPK活性化,Hsp72誘導,胃潰瘍・虚血再灌流障害に対する保護効果,プロテアソーム阻害効果,アミロイド形成抑制・タンパク質結晶化抑制効果,ES細胞の分化促進効果など) は,H2O2処置によっても引き起こされることも報告されてきており,微弱パルス電流の作用本体は,H2O2の適度な産生にあることが示唆されてきた。
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