研究課題/領域番号 |
15K12516
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
若山 修一 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00191726)
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研究分担者 |
山本 衛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (00309270)
坂井 建宣 埼玉大学, 研究機構研究企画推進室, 准教授 (10516222)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨粗しょう症 / 骨密度 / アコースティック・エミッション / 脱灰 |
研究実績の概要 |
骨粗しょう症を模擬するため、薬品によって奪回した低密度皮質骨試験片を作製し、圧縮試験を行い、アコースティック・エミッション(AE)法で破壊挙動を調査した。 はじめに、ウシ大腿骨から直方体ブロック状の試験片を作製し、見掛けの密度が元の80%になるまで薬品(カルキトックス:塩酸4.8%,エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)0.1%)による脱灰処理を施した。しかしながら、試験片表面付近のみがほぼ完全に脱灰され、内部には未脱灰の組織が残った。他の薬品(K-CX :塩酸,キレート剤など)の使用、脱灰液の濃度の調整、脱灰中の温度や時間の調整などを試みたが、全体が均一な密度になる試験片は得られなかった。そこで、試験片形状を円筒にして脱灰液との接触面積を大きくすることで、未脱灰部分を最小化した。 作成した低密度試験片の圧縮試験を行い、AE法でミクロ損傷の検出を行い、微視破壊過程を調査した。圧縮強度及び圧縮弾性率は、健全骨に比べて優位に減少した。しかしながら、圧縮破断ひずみには有為な変化は認められなかった。健全骨では、ほとんどのAE信号は最終破断時に検出され、徐々にミクロ損傷が蓄積しカタストロフィックな破壊が生じたことが示された。一方、低密度骨では、最大荷重前後に大振幅のAE信号が検出され、巨視的なき裂が段階的に進展して破壊に至ることが理解された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨粗しょう症によって骨密度の低下した皮質骨を模擬するため、2種類の脱灰液を用いて脱灰処理を行った。試験片の脱灰液との接触面積を増やすために、角柱状から円筒状に試験片形状を変更し、脱灰液の温度や濃度、脱灰時間、脱灰の際の液の攪拌の有無など、脱灰処理の条件を幅広く検討したが、見掛けの骨密度は所望のものを得られたものの、完全脱灰部分と未脱灰部分の2層構造の試験片しか得られなかった。また、これらの研究に時間を要したため、ラットの大腿骨試験片の研究を十分に行うことができなかった。 しかしながら、脱灰処理で得られた試験片の破壊挙動をAE法で評価でき、骨密度の違いによるAE発生挙動の差は明らかにできており、次年度の研究に必要な基礎的知見は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主としてラットから大腿骨を採取して試験片とする。健全骨のほか、卵巣除去などにより骨粗しょう症を発症させ、臨床的な意味での骨粗しょう症モデル試験片を用いて研究を進める。 また、圧縮試験に加え、ねじり試験も行い、種々の生理的負荷下での健全骨、および骨粗しょう症モデル試験片の破壊挙動を調査する。さらに、粘弾性特性をも検討し、骨密度のみならず、骨質の影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、骨粗しょう症を模擬するために脱灰処理による低密度皮質骨試験片を作成するために多くの時間を割いたため、ラットの大腿骨試験片に関する研究はほとんど行うことができなかった。また、圧縮試験を主として進めたため、ねじり試験は行えなかった。 そのため、ラット大腿骨試験片の作製に利用するはずだった消耗品費や、ねじり試験に必要な物品費は平成28年度に繰り越した萌芽研究全体を効率的に進めることができると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は主としてラット大腿骨を試験片をするため、これらに必要な消耗品の購入に使用する。 また、当初の計画ではねじり負荷と圧縮/引張り負荷を同時に作用させる複合負荷試験を予定していたが、実際の配分額は削減されたため、ねじり負荷と圧縮負荷を交互に行う予定である。また、単調増加荷重のみならず、繰返し荷重による疲労試験も予定している。これらのためには、大腿骨試験片に荷重を負荷するために骨端につかみ部を設ける必要がある。また、ねじり試験機のチャック部を改良する必要があり、以上の研究に必要な消耗品の購入にも使用する予定である。
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