研究課題/領域番号 |
15K12517
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
高野 博史 富山県立大学, 工学部, 准教授 (40363874)
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研究分担者 |
中村 清実 富山県立大学, 工学部, 教授 (20143860)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | まばたき / バイオメトリクス / 継続認証 / 行動的特徴 |
研究実績の概要 |
本研究では、瞬きによる行動的特徴と目周辺特徴による身体的特徴を組合せて継続的に認証を行う手法の確立を目的としている。自発性瞬目と随意性瞬目の識別(瞬目識別)には、識別器の作製方法に対する精度評価を行った。瞬きによる個人認証にでは、瞬き特徴の時系列波形を用いた個人認証法を提案し、その認証精度を評価した。 自発性瞬目と随意性瞬目の識別について、両瞬目の識別に用いる特徴量として、目頭、目尻、目中央および目周辺全体の各領域における勾配強度波形から取得された閉瞼時振幅、開瞼時振幅、閉瞼時の極大値、閉瞼速度、開瞼速度とした。識別器は、SVM(Support Vector Machine)を用いた。SVMで学習する際に、個人ごとの瞬きデータを用いる場合と、他人の瞬きも含めて学習した場合について識別性能を評価した。識別性能の評価には、再現率と適合率を総合的に評価するF値を用いた。個人の瞬きデータのみを用いて学習した場合と他人の瞬きデータも含めて学習した場合のF値は、それぞれ0.9、0.85となった。実験結果より、学習データの種類によらず高い瞬目識別性能が得られた。 次に、瞬きによる個人認証について、勾配強度の時系列データ(勾配強度特徴量)と各勾配方向で勾配強度を求める勾配方向特徴量に対して、DTW(Dynamic Time Warping)を用いた個人認証法を提案した。提案法の評価では、本人拒否率と他人受入率が等しくなる等誤り率EER(Equal Error Rate)を用いた。実験結果より、勾配強度特徴量を用いた場合、随意性瞬目および自発性瞬目のEERはそれぞれ11.7%、23.2%であった。一方、勾配方向特徴量を用いた場合、随意性瞬目および自発性瞬目のEERはそれぞれ0.5%、5.17%であった。以上の結果より、勾配方向特徴量を用いることで大幅に認識精度を向上させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
瞬きによる個人認証に関する研究では、自発性瞬目と随意性瞬目による個人認証に瞬きの時系列波形を用いてDTWによる認証法を提案した。瞬きの時系列波形として、勾配強度特徴量と勾配方向特徴量の2種類に対して精度評価を行った。実験の結果より、勾配方向特徴量を用いることで、勾配強度特徴量と比較して大幅に認証精度が向上することが明らかとなった。勾配方向特徴量を用いた認証精度は、随意性瞬目でEERが0.5%、自発性瞬目ではEERが5.17%であり、本研究で提案した瞬きによる個人認証は、瞬き以外の行動的特徴量を用いた個人認証と比べて十分に高い精度が得られることが示された。 自発性瞬目と随意性瞬目の識別については、個人ごとに識別器を作製した場合と他人の瞬きデータを含めて識別器を作製した場合で、瞬目識別性能の低下はほとんど見られなかった。また、どちらの学習データを用いてもF値の平均が0.85以上となり、高い識別率を得た。
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今後の研究の推進方策 |
瞬きによる個人認証については、平成28年度に実施した実験では被験者11名に対して認識精度の評価を行った。瞬きの時系列波形を用いてDTWによる認証法が有効であることを示すことができたが、提案法の信頼性を向上させるためには被験者数を増やす必要がある。今後は、被験者を50名程度まで増やして、提案法の認識精度を調査する。現在、勾配方向特徴量はすべての勾配方向を利用しているが、個人認証に有効な勾配方向が存在する可能性がある。そこで、勾配方向の組み合わせを変化させて認証性能を調査し、個人認証に効果的な勾配方向特徴を明らかにする。 一方、瞬きによる個人認証や自発性瞬目と随意性瞬目の識別に関する評価実験では、データの取得時間にほとんど差がない一日分の瞬きデータを用いた。登録した瞬きデータとは異なる日で取得した瞬きデータで認証を行った場合、個人認証や瞬目識別の精度が低下することが予想される。そこで、複数の日で実験を行い、瞬きデータの取得日時が異なる場合に個人認証や瞬目識別の精度がどのように変化するかを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
瞬き認証法の評価を行うために、被験者の人数を50名程度予定していた。また、認証性能の経日変化を調査するために、複数日で実験を行う予定であった。今回新たに提案した認証法の妥当性を評価するために、まずは少人数で認証精度の評価を行ったが、時系列データを用いた個人認証法の開発や評価に時間を費やして、被験者数を増やして複数日の実験が実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究成果で瞬きの時系列波形を用いた個人認証法の有効性が示されたので、多数の被験者でデータを取得し、提案法の評価を行う予定である。研究費の残金は、被験者の謝金や物品購入に充てる。また、これまでの研究成果を国際会議や国内学会、論文誌で公表するため、海外出張などの旅費や論文掲載費としても使用する。
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