研究課題/領域番号 |
15K12522
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
土肥 徹次 中央大学, 理工学部, 准教授 (20447436)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マイクロマシン / 血圧脈波計測 / トノメトリ法 / マイクロセンサー |
研究実績の概要 |
平成28年度は,日常的な健康状態を計測できるウェアラブルデバイスとして,長さ38mm,幅35mm,厚さ20mmの3軸調節機構を持った血圧脈波計測デバイスを試作した.試作デバイスには平成27年度より研究を進めてきたMEMS 3軸力センサをアレイ化したものを改良して使用した.このウェアラブルデバイスを使用することで,血圧脈波を計測可能であることが確認できた. また,トノメトリ法を利用した血圧計測の測定精度について評価を行うため,トノメトリ法を利用した腕輪型血圧脈波計測デバイスと,光電容積脈波法を利用した指輪型脈波計測デバイスを試作した.試作したデバイスで脈波計測実験及び血圧推定実験を行い,トノメトリ法,PTTから血圧を推定する方法,光電容積脈波の特徴量を重回帰分析して血圧推定する方法に加え,トノメトリ法の3軸力センサで計測された脈波波形を重回帰分析して血圧推定する方法で問題なく血圧計測ができることを確認した.試作デバイスで計測した血圧値と市販血圧計を比較した結果,トノメトリ法と市販血圧計との相関係数は0.90となった.一方,PTTによる血圧推定では0.93,光電容積脈波の波形の特徴量を用いた重回帰分析では0.91で,トノメトリ法によるz軸方向の脈波波形を用いた重回帰分析が0.97,3軸方向の脈波波形を用いた重回帰分析が0.99となり,市販血圧計との相関が最も高くなった.以上より,トノメトリ法の3軸力センサで計測された脈波波形を重回帰分析して算出した血圧値によって,従来よりも高精度な血圧計測が実現可能であることを示し,低負荷で高精度なウェアラブル血圧計測デバイスの実現が期待できる可能性を示した. さらに,頭部の浅側頭動脈での計測実験も行い,2つの3軸力センサの差分を計算することで,筋肉の動きによって発生する体動ノイズの影響を低減できることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では,申請当初は平成28年度に試作した柔軟で小型な3軸力センサの性能向上と,血圧計測の精度向上を行うための機能を追加する予定であった.また,絆創膏型の柔軟なデバイスに統合し,試作した血圧脈波計測デバイスにより血圧計測実験を行い,日常的な使用に適したデバイスであることを示す予定であった. しかし,研究の進捗に伴い,血圧計測の精度向上のために3軸力センサの性能向上による精度向上よりも,3軸力センサの複数利用による演算や,計測された血圧脈波波形からの特徴量抽出による回帰分析的な演算を行う方法が適していることが分かった.そのため,当初の計画とは実現の方法が異なるものの,血圧計測の精度向上という面では,実用的かつ現実的な手法による精度向上が実現できた.また,当初は絆創膏型の柔軟なデバイスに統合することで日常生活に適したデバイスとする予定であったが,腕時計型のウェアラブルデバイスとすることに変更した.これは日常的な血圧計測を実現する際に,体動によるノイズが非常に大きな悪影響を及ぼすことがわかり,その体動ノイズ対策を行うためには絆創膏型デバイスよりも,腕時計型デバイスが適していることが分かったからである.この腕時計型デバイスを用いることで,既に血圧脈波計測を実現していることから,当初の予定とは異なる装着方法になったものの,実用的なデバイスとすることができたため,研究が順調に進展しているものと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,最終年度であることもあり,今までに試作してきた血圧計測デバイスによる血圧脈波計測実験を行い,誤差±5 mmHg以下での血圧計測の実現を目指す.この際,当初の絆創膏型デバイスではなく,腕時計型のウェアラブルデバイスとなったことから,デバイス装着の再現性を高めることが重要であると考えられる.そのため,高い再現性を実現するための装着法について検討することによって,血圧計測の精度低下を抑える予定である.また平成28年度に得られた研究成果として,血圧脈波の特徴量抽出とその回帰分析的な手法による精度向上が有効であることがわかったので,試作した血圧脈波デバイスを用いて実験担当の大学生,および,大学院生で血圧計測実験を行い,その精度向上の有効性を確かめる.さらに,誤差低減機構のなどを進めることで,最終的には誤差±5 mmHg 以下での血圧脈波計測を目指し,日常生活での連続的な血圧脈波計測実験を行うことで,高血圧症に対する新たな知見を得ることを目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に次年度使用額が生じてしまったが,少額であるため無理に使用するよりも,平成29年度にまとめて使用した方が有効に使用できると判断したため,次年度使用額を残すこととした.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用予定額は少額であるため,当初の予定していた消耗品等に加算して使用することを予定している.
|