平成29年度は,試作した腕時計型のウェアラブルデバイスの改良を行いつつ血圧脈波計測実験を行い,日常生活中での使い易さと血圧測定の誤差について検証した. まず,デバイスの装着再現性を高める補助デバイスを試作することで高い再現性をもった装着を実現し,その結果として使い易さの向上を目指した.試作した補助デバイスにより装着の再現性評価実験を行い,装着のずれの標準偏差をX軸で55 %,Y軸で60 %低減できた.さらに,血圧脈波計測精度実験では,補助デバイスを用いることで脈波振幅を平均で25%増加できた.また,補助デバイスを用いることで血圧脈波計測までにかかる所要時間の平均を38%短縮できた.以上より,補助デバイスを用いることで血圧脈波計測デバイスの装着の再現性を向上することができ,その結果として,血圧脈波計測デバイスのユーザビリティの向上を実現した. 次に血圧計測精度評価として,血圧較正の手法の検討とその計測精度について検証した.血圧較正の方法としては,左手に試作したウェアラブルデバイス,右手に市販血圧計を装着し,両者のデバイスで同時に血圧計測を行う.ウェアラブルデバイスで計測された力の最大値の5回の平均値と,最小値の5回の平均値を算出し,最大値の平均値が収縮期血圧(最高血圧)と比例し,最小値の平均値が拡張期血圧(最低血圧)と比例すると考え,力から血圧へと変換する手法を検討した.この際,血圧値を意図的に変化させるため,デバイスを装着した両腕部と心臓との相対的な高さを-20~40 cmの範囲で変化させた.その結果,収縮期血圧と力センサの最大値との相関係数は平均で0.96,拡張期血圧の場合は平均で0.85となった.そのため,収縮期血圧のみを使用して較正を行った場合には,概算で±4.8 mmHgの精度で血圧計測が可能であると推測でき,高精度な血圧脈波計測デバイスを実現できた.
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