研究課題/領域番号 |
15K12523
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
横山 昌幸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20220577)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超音波照射 / がん併用療法 / X線照射 / 一酸化窒素 / ラジオセンシタイザー / 固形がん |
研究実績の概要 |
本年度は以下の2つの事柄の実験を行った。 (1)in vivo実験用がん細胞の選定とin vitro培養 In vivoでの超音波+X線照射併用療法を行うに当たり、最初に用いるがん細胞を決定する必要がある。併用療法の効果を最大に示すがん細胞を選択するために考慮した因子は、X線感受性、超音波によるNO産生、および癌組織新生血管の進展の程度である。X線感受性はがん細胞によって大きな違いは無く、また超音波によるNO産生については比較データが皆無であることから、第3点目の癌組織新生血管の進展の程度によって選択することにした。新生血管の密度が高い癌組織では、NO産生によって血液からの酸素供給によってのX線照射の高い殺細胞効果が期待できるからである。マウスの固形腫瘍であるC26を選定した。C26をin vitroで培養・増殖・凍結保存した。 (2)骨による超音波照射の屈折、反射、干渉問題の検討 in vivo超音波+X線照射併用療法では癌局所への選択的超音波照射が重要であるが、骨での反射・屈折によって正確な超音波照射が妨げられる可能性がある。この解析のために、ヒト頭蓋骨を用いてその500kHz超音波の透過超音波強度をハイドロフォンで測定した。すると骨表面での屈折のために照射深度50mmで14mmも超音波の焦点が横にずれていた場合があった。また、骨表面で反射した超音波が超音波振動子の表面で再反射し、直進波と干渉することで、透過超音波強度が大きく変動することが判明した。すなわち超音波振動子の位置を骨から1mm程度離すだけで透過超音波強度が3倍程度変動した。以上の事実は、超音波の骨での屈折・干渉挙動を確認しないと正確に癌局所への照射が不可能となることを意味する。以上のことから、in vivo実験の前にマウス骨での反射・屈折の検証が重要であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌局所への選択的超音波照射の懸念材料であった骨による屈折と干渉の問題を検討したところ、予想よりもずっと大きいものであることが判明したため、平成27年度はこの問題の解析を主に行うことに変更した。用いた骨はヒトの頭蓋骨であり、マウスの骨に比べて表面の湾曲も骨厚の変化も小さいものであるにもかかわらず、超音波の照射効果に重大な影響が生ずるほどの屈折と干渉による強度変動であった。これまでは、骨厚による超音波透過率のみが問題にされてきたが、新たに屈折と干渉による強度変動が重要であることを発見した。よって、予想外の大きな研究の進展となった。 また、in vivo実験に関しては細胞等の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの骨格を用いて照射される超音波強度を検証してから, in vivo併用実験を開始する。In vivo実験の開始が当初の予定から6ヶ月ほど遅くなったために、ラットの癌の検討を行わずにマウスの癌に集中して実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は予定していた動物実験が開始できなかったので、使用した物品費が低く抑えられていた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の動物実験を中心に次年度使用額が使われる予定である。
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