研究課題/領域番号 |
15K12524
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心筋収縮 / in vivoイメージング / カルシウムイオン / 熱パルス / 拡張性心筋症 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、in vivoにおけるサルコメア長とCa2+同時イメージングを可能にするために必要な装置の開発と資料の作成を行った。 1.α-actinin-cameleon-nanoを発現する遺伝子を持つ遺伝子組み換えアデノウイルスベクターを作成した。現在、ウイルス粒子をin vivo心臓に安定して感染させるためのウイルス増幅作業を行っているところである。さらに、α-actinin-cameleon-nanoをin vivoマウス心臓で観察する前段階として、Ca2+感受性蛍光色素(例:Cal-520)を用いた生きたマウスの心臓におけるCa2+動態観察を行い、多くのCa2+感受性色素の中から試薬を選別し、実験条件の検討を行った。 2.並行して、熱パルス照射と同時にサルコメア長(SL)およびCa2+の高速ライブイメージングを行うため顕微鏡システムの改良を行った。具体的にはこれまでに構築したin vivoライブイメージング用共焦点顕微鏡に、Cameleon-nanoが持つ2つの発色団(CFP・YFP)の2色を同時にイメージング可能な2光路系を導入するため、顕微鏡メーカー(Olympus)の協力を得て特注部品の開発を行っている。 3.今後使用予定の拡張型心筋症モデルマウス(DCMマウス)の繁殖を行い、実験条件に適合する週齢の検討を行った。 4.成果発表に関しては、in vivo顕微鏡系を用いた生きたマウスの心臓におけるサルコメアイメージングについての論文を発表した(Kobirumaki-Shimozawa et al., 2016)。さらにα-actinin-cameleon-nanoによるサルコメア長とCa2+イオン動態の同時計測については論文を投稿中である。上記2つの成果に関して、第60回米国生物物理学会および第93回日本生理学会大会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組換え遺伝子発現用のアデノウイルスベクターが完成し増幅段階に入ったことで、実験の前段階で最も時間のかかる2つの過程のうちの1つがクリアされた。もう一方は顕微鏡の改良であるが、こちらはメーカーとのやりとりでやや遅れが出ているものの、近日中に部品の開発が終了するものと考えている。また、今後使用する予定の拡張性心筋症モデルマウスも順調に繁殖を行っており、全体として問題なく進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は以下の3つを柱に研究を遂行する予定である。 1. 心機能に関するマクロレベル・ミクロレベル情報の統合解析法の確立:野生型マウスのin vivoライブイメージングを引き続き行うとともに、得られたデータの解析手法を構築する。ここでは、心筋細胞内カルシウムイオンの微細な心筋組織内伝播動態とSL動態を心電図や心内圧(および、さらに多くの情報を得られる圧-容積(P-V)ループ)と統合して解析する方法を確立していく。 2.DCMマウス心臓への応用:野生型マウスのデータの集積の完了後は、まず野生型に対する物理的刺激(大動脈クランプによる血圧低下)や薬剤投与(アドレナリン投与等)の影響を分子レベルで検出する。 3. 局所熱パルスによる心臓内の心筋加熱収縮:マウス成体から摘出した心臓を大動脈から逆行性に灌流し、赤外光レーザーを照射することによって心臓という臓器レベルにおいて心筋細胞の収縮を誘発できるか否かを検証する。さらに、申請者が独自に開発したサルコメア長・Ca2+イメージング法により、熱パルスに対する心筋細胞の応答を分子レベルで定量的に評価・解析することにより、そのメカニズム解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vivo観察用顕微鏡システムの改良にあたり、2光路系を組み込むための光学部品を複数新たに開発する必要が生じ、メーカーとともに設計および作成を行っていたが、当該部品の作製および納入が年度内に間に合わなかった。これに伴い、申請書に記載していたパルスオキシメータの顕微鏡システムへの導入も遅れたことにより、その分の研究費を次年度に繰り越すこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費は、理由欄で述べた新規開発光学部品とパルスオキシメータの購入に充てる予定である。平成28年度分の研究費は、申請書の予定通り主に消耗品の購入費用として使用する。
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