研究課題/領域番号 |
15K12527
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
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研究分担者 |
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (70369114)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リウマチ / アポトーシス / リポソーム / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)は、異常増殖した滑膜細胞が形成する肉芽組織(パンヌス)による骨組織破壊が特徴である慢性炎症性自己免疫疾患である。RAの薬物療法がおこなわれているが、十分な治療効果は得られていない。また、抗RA剤は重篤な副作用も報告されている。そこで、より安全で治療効果の高い薬剤の開発が急務である。 ベシクル分子とミセル分子から成る新しいナノ粒子であるハイブリッドリポソームがRA(滑膜)細胞に対してアポトーシス誘導により増殖を抑制することを見い出している。さらに、RAモデルマウスに対して、RAに特徴的な手指の腫れや関節の変形を抑制する基礎的知見を得ている(Bioorg. Med. Chem. Lett., 21, 207 (2011))。本研究では、ハイブリッドリポソーム(HL)によるアポトーシスカスケードおよびRA細胞増殖抑制による免疫制御を明らかにする。 本年度は、ヒトリウマチ(RA)滑膜(HFLS-RA)細胞の増殖に対するHLの抑制効果およびRAモデルマウスに対するHLの治療効果を検討した。in vitroにおいて、HLのRA滑膜細胞(HFLS-RA)細胞の増殖に対する顕著な抑制効果が得られた。フローサイトメトリーにより、HLによるHFLS-RA細胞のアポトーシス誘導が明らかになった。さらに、in vivoにおいてHLを投与したRAモデルマウスの関節の腫れが減少した。関節切片の免疫染色による観察において、炎症性サイトカインの減少によるパンヌス形成の抑制効果が確認された。これらの結果は、HLのRA滑膜細胞の増殖抑制効果および炎症性サイトカインの抑制によるRAモデルマウスに対する治療効果を示している。(Drug Delivery, 22, 619 (2015))
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、HLによるアポトーシスカスケードおよびRA細胞増殖抑制による免疫制御を明らかにすることを目的としている。 本年度は、ヒトリウマチ(RA)滑膜(HFLS-RA)細胞の増殖に対するHLの抑制効果およびRAモデルマウスに対するHLの治療効果を検討したところ以下の興味深い知見が得られている。(1)in vitroにおいて、HLのRA滑膜細胞(HFLS-RA)細胞の増殖に対する顕著な抑制効果が得られた。(2)フローサイトメトリーにより、HLによるHFLS-RA細胞のアポトーシス誘導が明らかになった。(3)in vivoにおいてHLを投与したRAモデルマウスの関節の腫れが減少した。(4)関節切片の免疫染色による観察において、炎症性サイトカインの減少によるパンヌス形成の抑制効果が確認された。(Drug Delivery, 22, 619 (2015)) 以上のように、HLのRA滑膜細胞の増殖抑制効果および炎症性サイトカインの抑制によるRAモデルマウスに対する治療効果が得られ、当初の研究計画通りおおむね順調に研究課題は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画通りに研究を進め、(1)細胞膜から核に至るアポトーシス誘導の情報伝達機構について、カスペース阻害剤を用い、HLによるリウマチ(滑膜)細胞のアポトーシス誘導の有無をDNAのゲル電気泳動法およびフローサイトメーターにより調べ、カスペースカスケードを明らかにする。(2)蛍光偏光解消法による種々のリウマチ(滑膜)細胞膜と正常細胞の膜流動性と酵素活性測定法によるHLの細胞増殖抑制効果の相関関係を検証する。(3)in vivoにおけるリウマチモデルマウスを用いてHLの治療効果を検討する。HLは、マウスの尾静脈から反復投与し、治療効果の判定は、関節腫脹および関節変形などの肉眼的観察、リウマチスコア法および組織切片観察により検討する。(4)HLをリウマチモデルマウスに反復投与後、採血し血清を得る。炎症性サイトカインをモノクローナル抗体を用いたELISA法および抗体アレイにより定量する。さらに、炎症性サイトカインにより生産される炎症マーカーのCRPを免疫比濁法などにより測定する。これらの結果から免疫制御に関する全貌を明らかにする。 このように、複合脂質膜を用いてリウマチ治療に関する研究を進める。
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