研究実績の概要 |
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)は、異常増殖した滑膜細胞が形成する肉芽組織(パンヌス)による骨組織破壊が特徴である慢性炎症性自己免疫疾患である。RAの薬物療法がおこなわれているが、十分な治療効果は得られていない。また、抗RA剤は重篤な副作用も報告されている。そこで、より安全で治療効果の高い薬剤の開発が急務である。 ベシクル分子とミセル分子から成る新しいナノ粒子であるハイブリッドリポソーム(HL)がRA(滑膜)細胞に対してアポトーシス誘導により増殖抑制効果を示すことを見出している。さらに、RAモデルマウスに対して、RAに特徴的な手指の腫れや関節の変形を抑制する基礎的知見を得ている(Bioorg. Med. Chem. Lett., 21, 207 (2011))。本研究では、HLによるアポトーシスカスケードおよびRAモデルマウスを用いて免疫制御を明らかにした。 平成27年度は、in vitroにおいて、HLのヒトリウマチ(RA)滑膜(HFLS-RA)細胞の増殖に対する顕著な抑制効果が得られた。フローサイトメトリーにより、HLによるHFLS-RA細胞のアポトーシス誘導が明らかになった。さらに、in vivoにおいてHLを投与したRAモデルマウスの関節の腫れが減少した。 関節切片の免疫染色による観察において、 炎症性サイトカインの減少によるパンヌス形成の抑制効果が確認された。(Drug Delivery,22,619(2015)) 平成28年度は、ヒトリウマチモデル細胞であるヒト滑膜肉腫(SW982)細胞に対するHLの増殖抑制およびアポトーシス誘導について検討した。HLはSW982細胞の増殖に対する顕著な抑制効果を示した。HLはSW982細胞に対するアポトーシス誘導において、カスペース-3、-8、-9を活性化することが明らかになった。(SOJ Pharmacy & Pharmaceutical Sciences, (2017), in press)さらに、SW982細胞をIL-1で刺激し、炎症性サイトカインIL-6およびTNF-αを発現するRA炎症モデル細胞の作製を確認した。
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