研究課題/領域番号 |
15K12529
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小林 尚俊 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクト二クス研究拠点, 上席研究員 (90354266)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ナノ‐マイクロ繊維 / 新規遺伝子導入ツール / 流路 / 細胞走化性 |
研究実績の概要 |
はじめにモノフィラメント単繊維ナノファイバー上において細胞の接着制御を試みたが、再現性に乏しく、制御が難しい状況であった。そこで、ナノファイバーからなるマルチフィラメント単繊維を作製して、その上での細胞挙動を観察した。初めに、昨年度の継続としてPGAのマルチフィラメントの作製しその上に細胞を播種して状況を観察した。細胞としては、血管内皮細胞とGFP-Helaを検討対象とした。PGAマルチフィラメント上に細胞の付着が認められたが、細胞のマルチフィラメント内への潜り込み等が観察され、これらの影響で細胞の顕著な移動は観察されなかった。そのため、高分子素材をPGAから細胞接着性が比較的弱い絹フィブロインを用いて検討を行った。比較試験として行った疎なフィブロインナノファイバーへの細胞接着試験では、疎なナノファイバー上でファイバーに沿った形で特にGFP-Hela細胞の進展が観察された。 細胞-基材相互作用が比較的弱いことは、細胞の走化性は有利に働くと考え、フィブロインナノファイバーからなるマルチフィラメント単繊維を作製して細胞の接着、移動に関して検討した。初期的に細胞は付着するが、培養を続けると細胞は、フィブロインマルチファイバー上から離脱してしまいデバイス化に向けては更なる工夫、改良が必要な状況にある。これらの結果から、マルチフィラメントの単繊維よりは、PEG化した基材の上に形成する配向性を持た疎なファイバーシートの方が有効性が高いことが確認された。これらを用いて最終年度のデバイス化に用いることとする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初めに、昨年度の継続としてPGAのマルチフィラメントの作製しその上に細胞を播種して状況を観察した。PGAマルチフィラメント上に細胞の付着が認められたが、細胞のマルチフィラメント内への潜り込み等が観察され、これらの影響で細胞の顕著な移動は観察されなかった。そのため、高分子素材をPGAから細胞接着性が比較的弱い絹フィブロインを用いて検討を行った。フィブロイン100㎎/mlのHFIP溶液を調製し、印可電圧10kV、送液速度0.3ml/hr、電極間距離18㎝の条件で、電解紡糸のコレクターを円盤状の者を使用し、1‐2分間紡糸を行うことで円盤エッジ上に形成するナノファイバーを回収し、紙縒り状に成型することで作製した。その結果、直径約0.6-3μm程度のファイバーの集合体でマルチフィラメント化して得られた単繊維の直径は約40μmであった。このマルチフィラメント単繊維ファイバーへ血管内皮細胞を播種して細胞接着状態をSEMにて観察を行ったところ、細胞の離脱が観察されたため、再度、絹フィブロイン材料としてPEG化した基材の上に形成する配向性を持た疎なファイバーシートに関して検討を進めた結果、繊維に沿った細胞の進展が確認され、デバイス化には有効性が高いことが確認された。この材料を用いて最終年度にデバイス化と遺伝子導入挙動の検討を進める方針が見いだされた。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞のファイバーに沿った進展を比較的安定的に得られるような材料と繊維密度が得られてきたので、細胞の走化性を得られるシステム作りを進める。特に、栄養、酸素などの濃度勾配を付けることで実現をめざすが、達成が難しい場合は、疎なナノファイバーシートを積層するようなシステムを作り、ファイバー層を細胞が通り抜ける際にターゲット遺伝子を取り込むようなシステムを含めて再検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画初年度に発生した遅れが影響して、成果発表等に予定していた旅費、その他の支出が少なかったことが主な原因である。繰越金に関しては、研究のさらなる加速を目指して、来年度使用予定額に加えて、人件費、謝金へ充当する予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰越金に関しては、研究のさらなる加速を目指して、来年度使用予定額に加えて、人件費、謝金へ充当する予定である。
|