研究課題/領域番号 |
15K12531
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
姜 貞勲 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50423512)
|
研究分担者 |
戸井田 力 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40611554)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 免疫吸着療法 / 自己免疫 / 拡張型心筋症 / 自己抗体 / ナノ分子 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
拡張型心筋症の進行に関与する特定の血中免疫グロブリンG(IgG)の除去を目指した新規ナノ分子システムを開発した。ナノ分子システムの本体は、マクロファージに対して特異親和性を有するホスファチジルセリンとホスファチジルコリンとの混合によって作製した。 また、IgG抗体との結合のために抗体と高い親和性を有するプロテインGをナノ分子表面に修飾した。ナノ分子の粒子径は350 nm以下であり、粒子のゼータ電位はー90mV程度であった。プロテインG修飾によるナノ分子のサイズとゼータ電位の変化は確認できなかった。 ナノ分子システムの機能評価は細胞を用いて行った。FITC標識マウスIgGをナノ分子システム含有培地に添加すると、IgGはナノ分子システムと安定的に結合することを確認した。さらに、マクロファージRaw264.7細胞にIgGと結合したナノ分子を添加すると、Raw264.7細胞から強い緑色蛍光が観察された。一方、ヒト子宮頸がん由来のHeLa細胞、ヒト肝癌由来のHepG2細胞、およびマウスメラノーマB16細胞からは、全く緑色蛍光が観察されなかった。 ナノ分子システムはマウス体内で非常に安定であり、血中投与後48時間経過しても血中に存在することが確認できた。 これらの結果は、ナノ分子表面に修飾したプロテインGはIgGと安定的な結合が可能であり、IgGとの結合はマクロファージに対するナノ分子システムの選択的認識に影響を与えないことを示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に目標していた特定の血中IgGの除去に必要なナノ分子システムの創製に成功した。血中IgGの分解・除去の効率を上げるために、高い貪食と分解能を有するマクロファージを選択的に認識できるホスファチジルセリンをナノ分子本体に導入した。 ナノ分子システムとIgG抗体との結合は、抗体と高い親和性を有するプロテインGをナノ分子表面に修飾することで実現し、実際に、ナノ分子システムにIgG抗体を添加すると、安定的に結合することを確認した。 細胞導入実験により、ナノ分子システムはマクロファージを選択的に認識することも確認した。IgG結合能とマクロファージ認識能を有するナノ分子システムは、マクロファージを経由した血中IgGの分解・除去に応用可能であることを確認した。 マウスを用いた実験で、ナノ分子システムの血中安定性も確認し、安定した拡張型心筋症動物モデルの作製にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
ナノ分子システムの創製、細胞導入実験、および拡張型心筋症動物モデルの作製は継続して行いながら、ナノ分子ステムによる拡張型心筋症の治療に重点を置いて研究を推進する。 治療効果の検討のために、最初のブタ心筋ミオシンの投与から10と17日目に、ナノ分子システムの本体とナノ分子システムを尾静脈により投与し、14と21日目に拡張型心筋症の治療効果を評価する。治療効果の評価として、HE染色と血中IgG濃度の測定、心エコーを用いて行う。 マウスは安楽死させ、心臓を摘出し、冷やしたPBSで洗う。心臓の重さを測ってから10%ホルマリン液で固定し、心臓をパラフィンで包埋した。ミクロトームで薄切した組織をガラスに固定し、HE染色を行う。組織切片の画像から心室の拡張率を算出する。 血中IgG濃度の測定のために、心臓を摘出する前に後大静脈からマウス血液を採取し、シリカゲル含有の血清分離管に移す。その後、遠心分離して血清を得る。血中IgG濃度はELISA Kitを用いて測定する。心エコーでは、心四腔の拡張と収縮機能の低下に重点を置いて観察を行う。
|