研究課題
本研究は、金属錯体を架橋点に含む高分子ミセルを酸化安定化することによって、ミセルの血中分解を完全に抑制しながらがん集積効率を最大限に高めることを第一の目的とし、腫瘍に集積した酸化型ミセルをビタミンCの静脈投与によって還元活性化することで、高濃度の抗がん剤で集中的にがん細胞を駆逐しながら、その抗酸化作用により正常組織へのダメージを低減する一挙両得ながん治療法を開発することを第二の目的とする。最終年度である平成28年度は、白金制がん剤ダハプラチンを内包する酸化型ミセルについて、ドラッグデリバリーシステムとしての機能を評価した。マウス大腸がん細胞に対する細胞殺傷効果を評価したところ、酸化型ダハプラチン内包ミセルは、通常のダハプラチン内包ミセルと比べて著しく低い細胞殺傷効果を示したが、アスコルビン酸(ビタミンC)ナトリウムの添加により細胞殺傷効果が増強されることが確認された。マウスに対する毒性と最大耐量を評価したところ、酸化型ダハプラチン内包ミセルは、通常のダハプラチン内包ミセルと比べて血液毒性と肝毒性が大幅に改善しており、最大耐量は2倍以上大きいことがわかった。また、大腸がんの皮下移植モデルに対して静脈投与したときの体内分布を評価したところ、酸化型ダハプラチン内包ミセルは、通常のミセルと比べて肝臓・脾臓・腎臓に対する集積が抑制されたが、腫瘍に対する集積は増大することが確認された。さらに、最大耐量における大腸がんの皮下移植モデルに対する抗腫瘍効果を評価したところ、酸化型ダハプラチン内包ミセルは、通常のダハプラチン内包ミセルより優れた抗腫瘍効果を示し、その効果はビタミンCの腹腔内投与と組み合わせることでさらに増強されることが確認された。以上のように、酸化型ダハプラチンミセルとビタミンCの併用療法は、正常組織に対する毒性を回避しながら制がん効果を高めることができると実証された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
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