研究課題/領域番号 |
15K12538
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
濱田 勉 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (40432140)
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研究分担者 |
松村 和明 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (00432328)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学 / 脂質 / 生物物理 / 高分子構造・物性 |
研究実績の概要 |
凍結保護機能をもつカルボキシル化ポリリジンに疎水性部位を導入することで、細胞の凍結保護作用が向上することを見いだした。その際、疎水性が高いほど相分離温度が低くなることを確認した。例えば22%の高分子濃度で比較すると、アミノ基の50%を無水コハク酸でカルボキシル基に変換した両性電解質高分子では、LCSTは50℃であったが、炭素数が一つ多い無水グルタル酸で変換した場合には45℃、炭素数が3つ多い3,3-ジメチル無水グルタル酸の場合、38℃、4つ多いブチル無水コハク酸では22℃であった。このLCSTと凍結保護作用の関連に付いては引き続き調査中である。また、メタクリル酸とジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合により、合成した両性電解質高分子においても細胞の凍結保護効果は確認された。そのとき、ポリリジン系と同様にブチルメタクリレートやオクチルメタクリレートなどの疎水性モノマーを5%程度共重合することで、さらに効果が高まることを確認した。その効果の原因として、主に細胞膜との相互作用の向上によるものである事が、リポソームとの相互作用を調べた結果分かった。本研究はBiomacromoleculesに掲載が決定している。また、温度低下におけるリポソーム膜挙動の観察を行い、ゆらぎ解析を数値化することで定量的な評価法の構築をすすめた。解析の結果、膜のゆらぎを抑制する温度域の存在が確認された。今後これらの知見を活かし、ポリマーと膜の相互作用実験に発展させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の目標であったポリマーおよび脂質膜の温度特性に関する理解が着実に進んでいる。両性電解質高分子のLCST相分離挙動、脂質膜のゆらぎ解析に関するこれらの成果をベースに、次の目標である脂質膜・ポリマー複合体の理解へと研究を推進することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
脂質膜・ポリマー複合体の実験・解析を進める。先ず、膜表面へのポリマー吸着挙動を明らかにする。膜ドメインを形成したリポソーム表面へのポリマー局在を解析し、膜の流動性がポリマー作用に及ぼす影響を明らかにする。得られた結果を電解質ポリマーのデザインにフィードバックさせ、より傷害の少ないマテリアル設計を行う。精密高分子合成の手法を用いて、カルボキシル基/アミノ基の比率、疎水性部位の導入、分子量などを制御する。
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