ポリリジンをベースとした、両性電解質高分子を数種類作成し、その側鎖の疎水性に応じて温度応答性の相分離挙動が異なることを示した。温度や塩濃度による相図を作成し、相分離挙動が分子設計により制御できることを示した。成果はJ. Polym. Sci. Aに掲載され、表紙イメージを飾った。次に両性電解質高分子と脂質を組み合わせて、両性電解質被覆リポソームを作成した。両性電解質高分子凍結保護剤存在化で、リポソームに担持したタンパク質を細胞懸濁液に添加し、凍結解凍を行うことで、凍結濃縮作用を起こし、細胞膜への複合体の吸着および、それに伴う細胞内への移行を確認した。そのときに、両性電解質高分子添加による凍結時の方が凍結濃縮度が高く、既存の保護物質であるジメチルスルホキシドとは機序が異なることが示唆される結果となった。本成果は、Nanoscale誌に掲載され、裏表紙イメージを飾った。また、両性電解質高分子と膜の相互作用解析を進め、高分子の新な機能(物質輸送)を発見した。細胞サイズリポソームを用いた実験より、先ず両性電解質高分子の膜への吸着を確認した。また、相分離させたリポソーム膜面への吸着実験により、流動的な相領域に高分子が選択的に分配されることが分かった。そして、高分子の存在下において、外部から加えた微粒子をリポソ-ム内へ透過させる条件を見出した。さらに、高分子と膜の相互作用を設計するためのベースとなる膜の基礎物性として、膜張力が誘起する融合現象、膜面上における微粒子の拡散挙動、静電相互作用による膜の相分離形成などを明らかにした。
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