本研究では、両親媒性ポリアミノ酸からナノ-マイクロ構造体を調製し、ワクチンアジュバントとしての機能を評価した。ポリ(γ-グルタミン酸)(γ-PGA)に疎水性アミノ酸であるフェニルアラニンエチルエステル(Phe)を縮合剤を用いて導入し、Phe導入率が40~80%の疎水化γ-PGAを合成した。得られた疎水化γ-PGAを各種有機溶媒(DMSO、クロロホルム等)に溶解し、その溶液を貧溶媒に添加することで、構造体形成を行った。その結果、Pheの導入率、良溶媒の種類、ポリマー濃度、良溶媒から貧溶媒への置換速度によって、ナノ粒子、マイクロ粒子、中空粒子、多孔質粒子、ファイバー等の構造体が形成可能であることが明らかとなった。また、O/Wエマルション法を用いた調製した疎水化γ-PGAからなる中空粒子・多孔質粒子は、粒子内部にペプチドを効率良く担持することができた。モデルペプチドとして卵白アルブミン(OVA)のエピトープペプチド(SIINFEKL)を担持した中空マイクロ粒子を調製し、マウス免疫実験により中空マイクロ粒子のワクチンアジュバントとしての機能を評価した。その結果、ペプチドのみを免疫した群においては、細胞性免疫の誘導が認められなかったのに対して、中空マイクロ粒子を用いた免疫群で高い免疫誘導効果が確認された。この免疫応答は、ペプチドワクチンのアジュバントして臨床研究によく用いられているIFAより高い値を示した。疎水化γ-PGAからなる中空マイクロ粒子は、内包ペプチドを抗原提示細胞に効率よくデリバリーすることで、優れた免疫誘導効果を示したと考えられる。ナノ-マイクロ構造体の形状制御可能な疎水化γ-PGAは、ワクチンアジュバントの素材として有望なツールになると期待される。
|