研究課題/領域番号 |
15K12543
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
橋本 朋子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (10589930)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シルクフィブロイン / ペプチド / 固定化 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、成形済みシルクフィブロイン材料に特異的に固定化でき、炎症シグナルに応答して創傷治癒機能を発現するハイブリット型ペプチドの合成と材料への固定化、バイオマテリアルとしての有用性評価を目的としている。ファージディスプレイによるシルクフィブロイン特異的接着ペプチド配列の探索に先立ち、シルクフィブロインの二次構造形成に大きく寄与する配列(GAGAGS)n(n=1~5)を選択し、繰り返しn数を変化させたペプチドをFmoc固相合成法により合成した。このGAGAGS配列と創傷に寄与する配列を有し蛍光ラベルしたペプチドを用いたシルクフィブロインフィルムへの固定化評価では、その固定に特異性が認められた。固体NMRやIR測定などによる構造解析結果より、同ペプチドの固定はシルクフィブロインフィルム中におけるベータシート構造含有率が高い程向上することが明らかとなった。これらの特異的接着の結果を受け、接着配列GAGAGSと創傷治癒促進配列の間に、MMPに応答する酵素切断配列が配置するハイブリットペプチドを合成し、前述の結果と同様に蛍光ラベルしシルクフィブロインフィルムへの固定化を行った。さらに、フィルムに固定化したペプチドのMMP応答性について評価した。ハイブリットペプチドを用いた系では、特異性は低いものの、有用な固定化が示唆される結果を得た。今後、繰り返し数を変えるなど、ハイブリットペプチドにおけるシルクフィブロイン接着配列の最適化を進めるとともに、炎症シグナルに応答した創傷治癒ペプチドの徐放プロファイルの解明、続いてin vitro評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題では、当初シルクフィブロイン特異的接着配列の探索法として、ファージディスプレイ法を予定していたものの、先だって検討したGAGAGS配列の利用により、ペプチドのシルクフィブロインフィルム材料への特異的な固定が可能であることが示唆され、シルクフィブロイン特異的接着配列としての有用性を確認できた。加えて、シルクフィブロインフィルムの構造と固定化との関連性についても新たな知見を得た。繰り返し数などの最適化が引き続き必要ではあるものの、GAGAGS配列を有したハイブリット型ペプチドの合成・評価を始めていることから、接着配列の探索法の変更に伴う進捗状況への影響はないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
GAGAGS配列の繰り返し数の検討などシルクフィブロイン接着配列の最適化、および酵素切断配列、創傷治癒配列との鎖長バランスの検討など、ハイブリットペプチドの改良を進めるとともに、in vitro評価系での炎症シグナルに応答した創傷治癒ペプチドの徐放プロファイルの解明、その機能評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
シルクフィブロイン接着配列としてシルクフィブロイン内配列を利用することにより、接着性に有用性・特異性が見出されたため、当初予定していたファージディスプレイによる探索に先立ち、この配列を用いた評価を深化させたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
最適なシルクフィブロイン接着配列の探索・評価を進める。
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