研究課題
本研究ではタンパク質ナノカプセルを構築し、これを細胞内シグナルによって崩壊させるシステムの創製を目指した。申請者らが着目したのは、病原性の観点からウイルスそのものではなく、それと非常によく似た構造体を形成するsmall heat shock protein(HSP16.5)である。このタンパク質は分子量16.5KDaのタンパク質24個が自己組織化することにより、内孔(内径7nm)を有する球状構造体(外径15nm)を形成している。9個のβシート構造による厳格な立体構造と、隣接するタンパク質との強固な疎水性相互作用のために、このナノ構造体は非常に安定であり、60℃においても安定にその構造を維持することができる。また構造体の内孔は疎水性のアミノ酸残基が配向しており、抗癌剤を含む多くの疎水性薬物を内包することが可能である。そこで本研究ではこのナノ構造体をドラッグキャリアとして利用し、Neuropilin-1を分子標的とする膵がん特異的ナノカプセルを開発した。そのアンテナ分子としてiRGDペプチド(CRGDKGODC)をコードする遺伝子を、ナノカプセル外表面に配向するC末端に様々な長さのアミノ酸リンカー組み込んだ。この膵がん特異的ナノカプセルはNeuropilin-1高発現株(膵がん)に高い親和性を示し、配列依存的かつリンカー長が長いほど取り込まれやすくなる傾向を示した。そこで様々な癌細胞に細胞死を誘導することが知られている薬剤OSU03012とカプセルを共存させ、55℃で30分間加熱振とうしたところ、カプセル1つあたりに40~50分子のOSU03012が内包されていることが明らかとなった。このOSU03012を内包した膵がん特異的ナノカプセルは、Neuropilin-1高発現株をより効果的にアポトーシス誘導することが示された。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of Toxicologic Pathology
巻: 31 ページ: 43-47
10.1293/tox.2017-0038
Gastroenterology
巻: 152 ページ: 1492-1506
10.1053/j.gastro.2017.01.010.
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 17170-17182
10.1038/s41598-017-17447-2