研究実績の概要 |
まず、前年度に同定したヒトSyncytin1由来膜透過促進ペプチドS19と従来の膜透過性ペプチドであるTATペプチドを融合したGFPの細胞質送達の効率を核移行シグナルを利用して正確に定量した結果、TATのみの場合よりも数90倍効率よく細胞質に送達できることを明らかにした(J. Control. Release, 印刷中)。 次に、この膜透過促進ペプチドS19と膜抗原に対する一本鎖抗体とを融合した遺伝子を作製し、大腸菌を用いて発現した融合タンパク質が膜抗原の細胞外ドメインに結合することをELISAにより確認できた。しかし、これを膜抗原過剰発現ヒト培養細胞に作用させ、共焦点顕微鏡により細胞内取り込みを観察するには収量が不十分であった。そこで、大腸菌の宿主や培養条件を変えて、大量発現条件の検討をおこなった結果、収量を数倍改善することができた。 また、新たに同定したヒト由来の膜透過促進ペプチドS19はシス型の膜透過は促進したがトランス型の膜透過は促進しなかったことから、トランス型膜透過促進ペプチドのデザインの参考とするために、申請者らが以前に見出していたウニ由来B55(J. Control. Release, 212, 85-93, 2015)によるトランス型の膜透過促進メカニズムの詳細な解析をおこなった。具体的には、トランス型の膜透過促進に必要な最小領域を特定するために、55 アミノ酸残基のB55の欠失変異体を作製した。その結果、B55のN末端側38アミノ酸残基であるB38Nがトランス型活性を保持していることが示唆された。
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