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2015 年度 実施状況報告書

光スイッチングによる表面撥水性の制御とスマート細胞分離システムへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 15K12547
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

中山 正道  東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00338980)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード光応答性 / フルオロポリマー / スピロピラン / コーティング / 疎水性表面 / 細胞接着
研究実績の概要

フルオロアルキルおよびスピロベンゾピランをそれぞれ側鎖に有するメタクリレート型モノマーをランダムラジカル共重合することで、光応答性フルオロポリマーを合成した。次に1wt%ポリマー溶液を用いて疎水化ガラス表面にスピンコーティングすることでナノスケールの厚みを有するポリマー被覆ガラス表面を作製した。ポリマー被覆ガラス表面の吸収スペクトル測定を行った結果、UV光(352 nm)照射により580 nm付近のメロシアニン(MC)由来の吸収が増大し、その後可視光(530 nm)照射によりMC由来の吸収が減少した。この結果から、照射光波長変化により表面に導入したスピロベンゾピランユニットの光異性化反応の誘起を確認した。さらにUV光または可視光照射後の表面の水に対する静的接触角測定を行った結果、UV光と比較して可視光照射後に有意な表面疎水性の増加が確認された(UV光照射後: 78°、可視光照射後: 88°)。次に、照射光の違いによるスピロベンゾピランの光異性化がウシ頸動脈由来血管内皮細胞の細胞接着に及ぼす影響について検討した。その結果、細胞培養前に可視光照射した強疎水性表面では細胞接着が大きく抑制されたのに対して、細胞培養前にUV光照射により中程度の疎水性にした表面では細胞接着が観察された。また、細胞が接着した表面に対して可視光を照射することで表面疎水性を増大させ、細胞を自発的に剥離させることが可能であった。さらにコンフルエント状態まで培養後に可視光を照射することで細胞シートとして剥離させることに成功した。以上より、細胞に対して非侵襲的な可視光照射を利用して、表面疎水性の増大により接着細胞を剥離させる光応答性培養表面の構築が期待された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スピロベンゾピラン含有フルオロポリマーをガラス基板にスピンコーティングすることで、照射光の波長の違いにより表面疎水性を変化させるなど、基板表面に光応答性を付加させることに成功した。また、中程度の疎水性を示すUV光照射後の基板表面において細胞の接着および増殖を確認し、さらに可視光照射による表面疎水性の増大で細胞を自発的に剥離させることが可能であった。以上、当初の研究計画に対しておおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

血管内皮細胞以外の数種の接着細胞を用いて、光応答性フルオロポリマー表面におけるスピロピランの光異性化反応にともなう表面特性の違いと細胞接着性の関係について解析する。細胞接着/脱着メカニズムの解析では、アルブミンやフィブロネクチンを用いてタンパク質の吸着挙動の違いを検討する。各状態の表面特性と種々のタンパク質の吸着挙動の相関を解析することで、光照射にともなう細胞の接着・脱着にタンパクの吸着挙動が及ぼす効果について解析する。また、細胞代謝阻害剤を培地中に共存させることで、細胞の代謝機能が接着・脱着性の及ぼす影響について評価する。
UV光照射した特定部位に光応答性を付加したパターニングを検討する。フォトマスクを利用して光応答性部位をマイクロパターン化した機能性表面を構築し、細胞の培養/回収が可能なマイクロパターン培養への応用を試みる。

次年度使用額が生じた理由

本年度は光応答性表面の作製とキャラクタリゼーションを中心に研究を遂行し、細胞を用いた評価スケジュールを考慮して、数種の細胞株および分子生物学試薬の購入を次年度以降に行うため。また、研究成果報告のための旅費の使用を次年度以降に行うため。

次年度使用額の使用計画

複数種の細胞株や細胞接着タンパクを用いて光応答性表面における細胞接着/脱着メカニズムの解析を分子生物学的評価を行う。また細胞代謝阻害剤を培地中に共存させることで、細胞の代謝機能が接着・脱着性の及ぼす影響について評価する。得られた研究成果に関しては、学術論文への投稿および学術集会において発表する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Visible-light induced cell detachment system using smart fluoropolymer-coated surface2016

    • 著者名/発表者名
      Masamichi Nakayama, Tomonori Kanno, Akihiko Kikuchi, Teruo Okano
    • 学会等名
      10th World Biomaterials Congress
    • 発表場所
      モントリオール(カナダ)
    • 年月日
      2016-05-18
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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