本年度は、嗅覚刺激提示と脳波計測を同時におこなうシステムの作製と、被験者数の拡大を目標として研究を進めた。まず実際に評価で脳波分析等を利用するためには、測定している時点で分析の結果が分かるオンライン分析で評価するか、もしくは測った直後にすぐ分析にかけて数十秒で結果がわかるような即時性のある評価をおこなう必要があった。また通常の脳波計で、適切に測れるようになるまでには実験者がある程度計測に習熟している必要があり、取り付けにも相当の時間がかかるので、本研究の評価法を広く使えるようにするにはこの時間を短縮する必要があった。本年度はドライ式の脳波計を利用することで、ほとんど脳波計測の経験のない実験者が14チャンネルの脳波を記録することができるようになった。 先行研究から、睡眠のためにアロマオイルの種類であるオレンジスイートオイルとラベンダーオイルが注目され、集中力を高めたいときにはオレンジスイートオイルとローズマリーオイルの使用が推奨されている。一方、ラベンダーオイルでは、脳波のθ波、α1波、α2波のパワーが増加し、血圧及び心拍が低下するのに対して、ローズマリーオイルではα1波,α2波のパワーが減少し、心拍・血圧・呼吸速度が増加するのでその影響はほぼ逆といえる。スイートオレンジオイルは神経系に与える影響は研究されているが、脳波については研究されていない。そのため、本年度は上記の3つの香り刺激に限定して、ラベンダーオイルとローズマリーオイルの反応が異なっていること、そしてスイートオレンジオイルは脳波に対してラベンダーオイルとローズマリーオイルのどちらに似た影響を与えるか調査した。被験者数の増加を目標としていたが、現在までに12名のデータを確保できた。分析では脳波パワースペクトルの算出などをおこない、異なる匂い刺激の間での差異を定量化した。
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