緑内障などの網膜に関する病気は、加齢に伴い無意識の内に進行し、気付いたときには手遅れの場合が多い。本研究ではウェアラブルの網膜検査装置を提案し、試作及び評価を行った。スマートグラスに網膜反射光を検出する機能を組み込み、網膜像を測定するウェアラブル機器を試作した。マイクロミラーを用いた共焦点光学系を試作改良し、計測実験を行った。 試作においては、投光と受光に同じファイバーを利用し,マイクロミラーにより走査を行った。受光の効率が悪いため信号とノイズ比が小さかった。改善するために、口径の大きい受光用のファイバーを別に設けた。これにより、解像度を幾分犠牲にしたが、信号とノイズ比を上げて測定できるように改良した。 スマートグラスを用いた光学系において、レーザビームの走査範囲は水平方向:約1.2mm、垂直方向:約1.3mmで、解像度は数10μmであると評価できた。次に模型眼を用いて測定し、入射光量:約47μWで模型眼の視神経乳頭部を走査した。画像の解像度は、測定像の線幅から評価して、縦横共に約80μmであった。模型眼の視神経乳頭部の構造も十分に映像化できており、緑内障の初期判定に用いられる視神経乳頭部の変形やコントラスト変化の画像化も可能であると考えられた。視神経乳頭部で、血管部の約3倍の信号強度を検出した。次に、試料として摘出した豚眼を用いて実験した。血管が一本通過している範囲を走査し、血管部は反射が低く画像化されており模型眼と同様の傾向が得られた。まだ模型眼と比べて不明瞭であるが、豚網膜血管部の検出に成功した。
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