研究課題/領域番号 |
15K12553
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊池 洋平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50359535)
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研究分担者 |
渡部 浩司 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (40280820)
金 聖潤 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50574357)
藤代 史 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 助教 (90546269)
菅井 裕之 群馬大学, 未来先端研究機構, 研究員 (90707001) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん放射線治療 |
研究実績の概要 |
材料探索および放射線治療用新型ビームモニターの試作を行った。現段階の候補材料として、修飾フラーレンとp型有機高分子、そしてホール輸送材料の3種から成るOPV用材料群が有望である結果を得た。また、これらの材料を用いた多素子のビームモニターの作製手法についての検討も行った。これに関しては、昨年度検討していた印刷エレクトロニクス技術(インクジェット法:IJ法)でビームモニターの有感部分自体を多素子化する検討に加えて、スピンコートによって一様膜を形成後にIJ法で電極のパターニングする手法の開発に着手した。この手法により、素子間の感度の均一性を向上できる可能性がある。これは、金属の電極材料の印刷回路作製用のインクとして活用できる可能性が生じたためである。 また、線量イメージング手法に関して、追加のシミュレーション環境の整備および画像再構成プログラムの作成に着手した。これは定位X線治療、特に強度変調放射線治療(IMRT、Intensity Modulated Radiation Therapy)について適用を試みるものである。再構成アルゴリズムについては医療診断画像の作成においてスタンダードなML-EM(Maximum Likelihood Expectation Maximization)法を採用しており、限定された投影方向数のデータからの画像化を目指すものである。投影データの不足という原理上の問題に起因する画像の幾何学的な歪みが観測されているが、今後、再構成時の計算に補正ファクターを導入することでこの軽減を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線治療用ビームモニターの材料選定および構造に関して進捗があったことに伴って、治療ビームのシミュレーションを行う際の幾何的な条件設定がある程度の範囲に絞れるようになった。これに伴って、昨年度懸念されていたシミュレーションについて生じていた懸念が解消したためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、これまでの研究の結果をもとに放射線治療用ビームモニターの材料・作製手法を確定したうえで、多素子型のビームモニターを試作する。また、これとともにこのデータ読み出し用の回路・システムも整備して、加速器・放射線発生器で発生した各種の放射線ビームを用いた性能評価を行う。また、ビームモニターをバルクヘテロ構造にすることの検討を行い、場合によってはこの構造によるビームモニターの試作も行う予定である。 また、線量イメージング技術に関して補正ファクターの導入などを検討することで、より実際の分布に近づける技術の開発を行う。現時点で導入を検討している候補としては医療診断画像分野で実用化されているMAP法が挙げられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、放射線ビームモニター用の候補材料が予定よりも絞れたことが理由である。これによって、材料の購入にかかる研究経費が削減された。 一方で、全体の予算に対する割合は大きくなく、研究経費の使用としては当初予定と大きな変更はないと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
放射線ビームモニター用の候補材料は昨年度までの研究によりおおむね決定している。研究成果の充実のため、当初の予定にしたがって材料の購入に充てることを計画している。
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