研究課題/領域番号 |
15K12557
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
竹澤 晃弘 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10452608)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人工関節 / 構造最適化 / 金属3Dプリンタ / 応力遮蔽 / 有限要素法 / 多孔質材料 |
研究実績の概要 |
人工関節置換術においては,主に金属製の量産人工関節が用いられることから,材料の剛性差に起因する残存骨の劣化(応力遮蔽と呼ばれる)に代表される,患者との適合性の問題がある.本研究ではこの問題の解決法として,金属人工関節を多孔質化し,さらにその多孔質構造を数値計算手法を用いて最適設計し,金属人工関節の見かけ剛性(実効的剛性とも言う)を残存骨と親和させる,新しいカスタムメイド人工関節を考えた.そして,複雑な内部構造を含む本提案人工関節の造形には,極めて自由度の高い製造手法である金属3Dプリンタを用いる.最終的に,残存骨にも十分に応力が作用するような最適見かけ剛性分布を実現する,多孔質金属の内部構造の最適化を目指すが,本年度は最初の段階として,見かけ剛性を実現する内部多孔質構造の最適化法を構築した.そして,金属3Dプリンタを用いて,最適設計した多孔質構造の試験片を試作し,圧縮試験による剛性の評価を行った.その結果,レーザー焼結タイプの金属3Dプリンタでは1割程度,電子ビーム焼結タイプの金属3Dプリンタでは2割程度の誤差があるものの,設計値と実験値の間に明確な相関が見られ,多孔質構造の剛性の最適設計が可能であることを確認した.次年度においては,残存骨の状態に応じて,最適な見かけ剛性を実現する内部多孔質構造の最適化法を構築する.そして,初年度に開発した内部多孔質構造をそれに応じレイアウトし,外形及び内部構造において残存骨と完全に親和した人工間接の開発を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り内部多孔質構造の最適設計法の構築及び,試験片の試作,実験検証まで完了し,問題のない結果を得ているため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,残存骨における応力の均一化を目的として,人工関節における見かけ剛性分布の最適化法(フリーマテリアル最適化法とも呼ばれる)を構築する.フリーマテリアル最適化は,外形のみを最適化する構造最適化法と異なり,対象物体の外形および剛性テンソルの成分分布を直接最適化する.そして,得られた連続的な解を参考に,等しい内部構造を仮定したいくつかの領域に対象を分割し,それらの見かけ剛性を目的関数として二段階目の最適化を行う.この手法と前項目で開発した内部構造最適化法を多段階で組み合わせ,マルチスケール最適化法を構築する.そして,実際に人工関節の最適設計を行い,外形及び内部構造において残存骨と完全に親和した人工間接を開発する.
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