変成ウィルスの仕組み解明が急務であるにもかかわらず,外径10-30 [μm]を有する細胞への微小生体情報(pH,細胞内温度,細胞外皮硬さなど)センシングに応えるべく技術が存在しないことが問題視されている.そこで本申請では,現在まで不可能であった,一つの生きた細胞を対象とした極微小領域での物理的・化学的センシングおよびin-situの連続生体情報変化観察が可能な多機能性センサ開発を目的とする.具体的には,蚊の口並みの無痛針開発で培った極細管創製技術を用いて,物理的・化学的な基礎情報であるpH,硬さ,温度を外径1-10 [μm]の先端径を有する「見かけ上1電極」同心円状の極微小領域センサとして集積し,細胞を対象としたプローブ型多機能センシングシステムを世界に先駆けて開発することである. 最終年度は,(1) 細胞直径が30~50 [μm]である単一細胞へのセンサ穿刺のために,細胞を死滅させることなく穿刺可能な穿刺条件の探索(解析および実験),(2) 先端直径5 [μm]以下を有するpHセンサによる,極微小領域のセンシングを目的とした動物実験を行った. その結果,以下の知見を得た. (1) 細胞に振動を与えることで細胞の見かけ上の剛性が高くなり細胞への穿刺が容易となることを確認,また細胞への変形量を評価値とした場合,先端直径に99%の有意性,先端直径と針直径の交互作用に95%の有意性を確認した.さらに,センサ最適形状は先端直径約1μm以下であれば,穿刺可能な剛性を有することを確認した. (2) 標準液を用いてpHと電圧との間に線形性の確認が取れたpHセンサを用いて,高剛性針型微小領域pHセンサの生体穿刺による生体内局所pHの直接的測定を確認した.
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