本研究では、母胎内という外から直接触れることのできない環境にいる胎児の生体情報計測に向け、超音波診断装置を用いた気泡の撮像によるワイヤレス圧力計測システムを提案し、提案システムの実現可能性を評価することを目的とし研究を行っている。超音波診断装置を利用することで、圧力計測部に電源が不要となるうえ、センサの形状を確認しながら情報伝達が可能となるため、情報伝達の確実性が向上する。 本年度は超音波診断装置の撮像条件を検討するため、超音波造影剤(気泡)の振動に関する理論的な考察を行った。超音波造影剤(気泡)が弾性領域での振動を行っていると仮定した際の圧力変化に対する共振周波数の変化量と超音波診断装置における流速計測時のドップラシフト量を比較したところ、同程度のオーダの値が得られる見込みがあることを確認した。実験系に関しては、シリンジポンプを用いた圧力印加機能の向上、被圧力印加モデルの改善を行った。また、撮像用の超音波診断装置として性能の異なる2種類の装置を用いた評価を行ったものの、いずれの装置を用いた場合も圧力印加による画像の変化は見られなかった。 研究期間全体として、試作実験系での圧力計測に適した超音波診断装置の撮像条件の抽出はできなかったものの、今後も継続して研究を行うための超音波診断装置と被圧力印加モデルおよび圧力印加装置で構成される実験系を構築できた。今後は撮像時の信号処理用フィルタの変更、超音波プローブの送信周波数の変更等を行い、圧力計測用の撮像条件の抽出を行う。
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