研究課題/領域番号 |
15K12563
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
石井 耕平 香川高等専門学校, 機械電子工学科, 助教 (40710653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 付け爪 / 遠隔モニタリング / 在宅医療 / 脈波 / ウェアラウルセンサ |
研究実績の概要 |
付け爪型脈波計を開発し在宅医療における遠隔モニタリングへの応用を図る事が本研究の目標である.デバイス取り付け部位を爪とすることで,長期間強固な固定が可能である.また爪には感覚神経,汗腺が無いため装着時の違和感を抑えることができる.複数の爪に取り付けることで多波長・多点同時計測も可能である.平成27年度は,小型反射式光電脈波計測回路の試作を行った.計測回路はLED(530nm)から照射された光の反射光をフォトダイオードにて検出し,フィルタおよび増幅回路を経て出力するものとした.20歳男性を被験者とし,椅子に座り安静状態において左手中指より計測し,脈波を取得することが出来た.試作回路の大きさは11mm×12mm,消費電力は30mWとなった.容量数mAhの市販ボタン電池を使用することを想定した場合,一週間程度の連続使用を実現するためには1/100から1/1000程度の省電力化を図る必要がある.大きさに関しては,無線回路,計測回路,電源を含め100mm2程度とする必要があることから,現在の計測回路の1/3程度までの小型化が必要である. 一方,得られた脈波の波形に関しては十分な精度が得られたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では平成27年度は固定方法の検討,測定原理の確立,LED、フォトダイオード、マイクロコントローラ、メモリ、電池により構成され測定値を内部メモリに蓄える一次プロトタイプの開発を行うとしていた.また,平成28年度は生体内通信を利用した,異なる爪に装着した複数のデバイス間の通信,平成29年度はデバイスからLANに接続された無線端末への外部通信を予定していた. 現状では,小型反射式光電脈波計測回路の試作,評価を行い測定原理の確立を達成したところである.計測回路はLED(530nm)から照射された光の反射光をフォトダイオードにて検出し,フィルタおよび増幅回路を経て出力ものであり,更なる小型化と省電力化により実用化が可能と考えている.一方,現時点において固定方法の検討,一次プロトタイプの開発については終えられておらず,計画はやや遅れている状況である.今後の対応として,計画を変更予定である.具体的には予定されていた一次プロトタイプ(無線通信機能を含まず,内部メモリに蓄積する方式)の開発の前に無線通信回路の開発を実施する.これにより平成27年度内に脈波測定機能,無線機能,電源の主要構成要素を備えた付け爪型脈波計の開発に目処を立てる.平成29年度に実証実験が可能なレベルまでプロトタイプの改良を進め,性能を評価する.また,この際に合わせて爪への固定方法の検討を行う.生体内通信を用いたデバイス間通信については,爪のインピーダンスが高く,電源の制約から実現が難しいと考えられている.そのため,個々のデバイスに無線通信機能を持たせ,LANに接続された無線端末を経由してPC端末にて脈派情報集約,解析する方式とすることで,多点同時計測を実現する.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に固定方法の検討,測定原理の確立,測定値を内部メモリに蓄える一次プロトタイプの開発を実施し,平成28年度には生体内通信を利用した,異なる爪に装着した複数のデバイス間通信,平成29年度はデバイスからLANに接続された無線端末への外部通信を予定していた.この計画に変更を加え,現時点では平成27年度に測定原理の確立,平成28年度は無線通信回路の確立および測定機能,無線通信機能を備えたプロトタイプの開発,平成29年度に付け爪サイズの実証モデルの開発および爪への固定方法の確立を行うものとする.この変更により,生体内通信を用いたデバイス間通信の開発が除外されることになるが,個々のデバイスに無線機能を搭載し,無線端末を経てPC端末にデータを集約することにより,目標としている多点同時計測は実現可能である. 平成28年度は無線通信機能の開発から着手することになる.現時点ではBluetooth4.1の超小型モジュールを使用予定である.大きさは3.5mm×3.5mm×1mm程度,動作時の電流は送信5.0mA,受信 5.4mA ,ディープスリープ 0.8μA であり,ボタン電池の容量でも使用が可能といえる.このモジュールを用いた試験用無線回路を試作し,性能を評価した後,平成27年度に開発した小型反射式光電脈波計測回路を接続,脈派の送信試験を行う.この結果に基づき,平成29年度は付け爪タイプの実証実験用プロトタイプを開発予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定ではデータ収集用にPowerLab 16ch LabChartPro 付・ADInstruments(1410 千円×1台),ミックスドドメインオシロスコープ,MDO4014B-3 100MHz・4ch+16ch+3GHzRF・Tektronix (1080千円×1台 )を導入予定であったが,採択時の減額により購入することが出来ず,より安価なデータロガー Graphtec GL900-4(215千円) に変更することとなった.またオシロスコープについては高専に備付のものを代用することにより対応している.以上のことが次年度使用額が生じた理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定している無線通信回路の開発において必要となる無線通信IC開発モジュール(約150千円)を導入予定である.また,当初の予定では可能な限り基盤作成を自らの研究室で行い,研究費を節約する予定であったが,回路の集積度を高めるためには専門業者への委託が必要であることが分かったことから,基盤外注費にとしても使用する計画である.
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