在宅医療を受ける患者の遠隔モニタリング用ウェアラブルデバイスとして、付け爪型脈波計の開発を行った。付け爪型脈波計の利点として次の三点が挙げられる。爪には汗腺、感覚神経がないことから、計測装置の装着に伴う不快な装着感がない。また付け爪の要領で爪に固定することにより数週間にわたる強固な固定を確保できる。さらに人体には20枚の爪があることから、複数のデバイスを異なる爪に取り付けることで、多点同時計測が可能である。その一方、指の曲げ伸ばしや物体との接触に伴う外乱により、脈波計測が妨げられることが課題として考えられる。 本研究期間では、付け爪型脈波計を生活環境下で使用した場合の外乱の影響を検討した。実験のために試作した脈波計測回路は反射型光電脈波計とし、光源のLEDの波長は530nmとした。計測回路はLEDから照射された光の反射光をフォトダイオードにて検出,フィルタおよび増幅回路を経て出力する。計測回路の大きさは11mm×11mmである。計測回路は紫外線硬化樹脂にて包埋することで防水仕様とした。計測回路の固定には接着剤を用い、左手親指の爪に固定した。電源およびデータロガーは左腕に固定し電源ケーブル、信号ケーブルにより計測回路と接続した。被験者は33歳男性とし24時間、サンプリング周波数1kHzにて脈波を記録した。実験中は入浴、睡眠、食事を含む普段通りの生活を送ることとした。計測したデータについてはLabChartの心拍数算出機能を用いて、心拍数に変換した。実験結果より日中の活動時間帯については、休息をとっている間は心拍数を得ることができたものの、その他では外乱の影響が大きく、心拍数の算出ができない時間が多かった。睡眠中について安定して脈波を計測することができた。
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