研究課題/領域番号 |
15K12566
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
鎌田 春彦 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, バイオ創薬プロジェクト, サブプロジェクトリーダー (00324509)
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研究分担者 |
宇山 浩 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70203594)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分泌膜小胞 / バイオマーカー / エクソソーム / アフィニティ精製カラム |
研究実績の概要 |
細胞膜上の発現膜タンパク質は、その性質上、近接した細胞にのみ作用し、遠隔にある組織や臓器・細胞へは作用し得ないと考えられてきた。しかし最近の研究から、細胞の膜成分を含んだ脂質二重膜として血液や尿に分泌されている「分泌膜小胞」が、遠隔臓器や細胞に対して作用を示すこと明らかになりつつある。また、この分泌膜小胞は、生理的にも分泌されていることが知られているが、疾患の発症や悪化、治癒に伴って、血液中の分泌膜小胞の存在量や発現タンパク質の種類・量が変化することも、明らかになりつつある。従って、この分泌膜小胞を疾患のバイオマーカーとして利用しようとする試みが注目されており、その検出・精製法の早期の開発が求められている。そこで本年度は、分泌膜小胞を認識可能な抗体分子の開発を実施するとともに、アフィニティー精製に適うカラムの作製に向けた基礎検討を行った。 まず我々は、複数のキャプチャー抗体によって分泌膜小胞を精製するために、CD81やEGFRに対する抗体を用いて、様々な細胞由来の分泌膜小胞で小胞形成に関わるテトラスパニン分子CD81をウェスタンブロットにて解析した。その結果、ヒト肺がん細胞であるH460およびH2228由来の分泌膜小胞では、いずれの細胞においても、CD81が検出された。さらに上皮がん由来の分子としてEGFRが分泌膜小胞上に発現していることも確認できた。これをもとに汎用的な分泌膜小胞バイオマーカー測定系として、CD81抗体で分泌膜小胞を補足し、バイオマーカーに対する抗体で検出するキャプチャー ELISA系を構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分泌膜小胞の捕捉に向けた検討については概ね良好に進捗している。また、セルロースベースの抗体担持モノリスカラムの作製についても、タンパク質の担持が可能な官能基を有したカラムの開発が進んでおり、概ね順調に研究は進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)精製分泌膜小胞の特性解析と精製法の評価(医薬基盤研) 分泌膜小胞には、がん細胞から直接分泌された膜タンパク質やmRNA、miRNAなどが内包されている。そこで以下のカラムによって回収された分泌膜小胞を、電子顕微鏡にて形態学的に比較解析するとともに、その回収効率などを他の精製法と比較解析する。さらに、回収された分泌膜小胞を、既存のELISA等を用いて解析し、回収された分泌膜小胞の性質について解析する予定である。 2) タンパク質反応性モノリスカラムの作製とその特性評価(大阪大) 前年度までに作製したセルロース系モノリスカラムに対して、タンパク質が結合出来るように表面加工を行う。具体的には、タンパク質中に含まれるLys基に対して反応性を持つN-ヒドロキシサクシニミドを結合させる処理を行う。また、その他の官能基として、糖鎖を還元することで生じるアルデヒド基に対して、アミノ基をカップリングさせる方法などでも、タンパク質の捕捉効率を解析し、それぞれのタンパク質結合法の間での優位性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度順調に研究が進んだため、使用額を軽減できた。一方、次年度の使用にあたっては、より効率的に研究に使用するとともに、研究計画の不測の事態を避けるために、研究費を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度での使用にあたっては、消耗品の購入および旅費の使用を計画している。
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