研究課題
細胞膜上に発現する膜タンパク質は、近接した細胞とのタンパク質間相互作用に関与し、遠隔にある組織や臓器・細胞とは相互作用し得ないと考えられてきた。しかし、近年、この細胞膜上のタンパク質が「分泌膜小胞」として分泌され、遠隔の組織・細胞と相互作用し、生理的な作用を示すことが明らかになりつつある。この分泌膜小胞は、がんや感染症等の病態と深く関連することが明らかになっており、疾患のバイオマーカー探索における有用な探索シーズと考えられている。そこで本研究では、分泌膜小胞を認識可能な抗体分子の開発を進めるとともに、これらの膜小胞を効率良く精製可能なアフィニティー精製に適うカラムの作製に向けた検討を行った。昨年度までに我々は、肺がんの培養細胞株から分泌膜小胞を効率良く精製するために、膜小胞に発現する膜タンパク質を解析するため、テトラスパニン分子であるCD81の発現解析を行った。本年度は、実際のヒト患者由来のオルガノイドから分泌されたタンパク質のプロテオーム解析を行うことで、疾患患者由来の分泌膜小胞を効率良く認識可能な膜タンパク質の同定を行った。超遠心法にて回収した分泌膜小胞をトリプシン等のタンパク質分解酵素にて消化し、分泌膜小胞の膜表面上に発現するタンパク質とその患者由来オルガノイドの膜タンパク質由来のペプチドを質量分析にて比較解析した結果、細胞間隙のタイトジャンクションの形成を制御するClaudin familyを多数同定することに成功した。これらの結果から、細胞から分泌される膜小胞は、細胞のタイトジャンクション形成メカニズムと何らかの関係性を示すことが強く示唆された。また、これらのタンパク質を認識する抗体を担持可能な、セルロースベースのモノリスカラムの形成にも成功しており、開発された技術基盤を用いて効率良く分泌膜小胞を回収可能なシステムの構築に成功した。
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Pharmazie.
巻: 71 ページ: 235-237
10.1074/jbc.M117.779686.
http://www.nibiohn.go.jp/bio-r/index.htm