研究課題/領域番号 |
15K12582
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市橋 則明 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50203104)
|
研究分担者 |
建内 宏重 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60432316)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 筋張力 / 超音波せん断波エラストグラフィー |
研究実績の概要 |
股関節伸展筋は、股関節の単関節筋である大殿筋と股関節と膝関節をまたぐ二関節筋であるハムストリングスとが主である。股関節伸展運動において、膝関節屈曲角度が変化すると、ハムストリングスのみ安静位での筋張力(受動的筋張力)が変化するため、同等の股関節伸展筋力を発揮するためには、ハムストリングスの筋活動を高めて能動的筋張力を増加させるか、共同筋である大殿筋の筋張力を代償的に高める必要がある。このように、複数の筋が関与する関節運動において、各筋の相対的な筋張力指標(受動的張力や能動的張力)を調べることで、運動時にどのように筋張力が制御されているかを明らかにすることができる。 実験では、健常者20名を対象として、股関節45度屈曲位での等尺性股関節屈曲運動を膝関節屈曲10度および80度の2肢位で負荷を変化させて行った。この2条件では,膝および股関節中心から下腿重心線までの距離が同じとなり,負荷量が一定であればトルクが一定になる。筋張力の測定には超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,筋活動の測定には表面筋電計を用いた。結果として、大殿筋の筋張力・筋活動は,膝角度の影響はなく負荷量の増加に伴い増加した。一方,ハムストリングスは、膝屈曲10°位よりも80°位で受動的張力が低下し,代償的に筋活動は膝屈曲10°位よりも80°位で増加した。結果として運動時の筋張力は両膝関節肢位で差がなかった。関節角度に応じて受動的張力を含む筋張力が外的負荷に対し一定となるように,神経学的に筋活動が調節されている可能性が示唆された。 本実験を通じて、現在まで不可能であった生体における運動時の筋張力の定量化が可能であることが明らかとなった。なお、本実験結果は、第51回日本理学療法学術大会(2016年5月27日~29日)において発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題で用いる、筋の受動的および能動的筋張力を非侵襲的に測定する技術は、新規の技術であり、その妥当性と信頼性を担保するために予備的実験を十分に実施する必要があったため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、股関節伸展筋だけではなく測定対象筋を変えて実験を行うこと、また、スクワット姿勢など荷重位での課題も測定課題に含めること、さらに、筋張力指標と運動パフォーマンスとの関連性についても分析を行うことが課題である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で用いる技術は新規の技術であり、予備的実験に予測よりも時間を要し、本実験として行うべき課題が次年度に繰り越されたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験被験者への謝金、実験消耗品の購入、ならびに研究成果発表のための旅費に使用予定である。
|