研究課題
本研究の全体構想は,グルタミン投与と神経-筋電気刺激を用いたトレーニングの併用が,癌性カヘキシアに及ぼす影響を検討することである.平成27年度には,大腸癌マウスにおいて,グルタミン(GLN)の投与が,癌性筋萎縮に伴うグルタミン合成酵素(GS)の発現量および筋量の低下を抑制するかどうかを検討した.5週齢の雄性CD2F1マウスを,対照(CNT)群とマウス大腸癌細胞株(Colon-26: C-26)を皮下に播種する癌性カヘキシア(C-26)群に分けた.C-26播種後4週間において,C-26群では,除癌体重の減少が速筋である長趾伸筋および遅筋であるヒラメ筋の筋重量低下を伴っていた.また,これらの筋では,GSの発現量の増大が認められた.一方,筋原線維タンパク質であるミオシン重鎖やトロポニンTの選択的な減少は認められなかった.これらの知見から,当該モデルマウスにおいて,癌性筋萎縮がグルココルチコイド誘因性のGS発現量の増大により引き起こされることが示唆された.そこで我々は,CNT群およびC-26群に加え,それらに生理食塩水に溶解した3% L-glutamine(GLN)溶液(500 mg/kg)を毎日投与するCNT+GLN群及びC-26+GLN群を作成し(各群n=6),GLN投与が癌性筋萎縮に及ぼす影響を検討した.C-26播種4週後において,腫瘍の重量は,C-26群とC-26+GLN群の間で差異が認められなかった.したがって,GLN投与は,癌細胞の増殖に影響を及ぼさないものと考えられる.一方,C-26群及びC-26+GLN群では,CNT群に比べ,除癌体重が20%程度減少した.この体重の減少は,長趾伸筋,前脛骨筋,腓腹筋の重量の減少を伴っていた.さらに, CNT群に対し,C-26+GLN群において,ヒラメ筋の重量の低下が認められた.したがって,本研究の結果から,我々の予想に反して,GLNの投与は,癌性筋萎縮を防止しないことが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載した通り,実験結果は我々の予想に反するものであったが,平成27年度に実施する予定であった実験は着実に遂行することができたことから,現在までの達成度として,おおむね順調に進展していると判断した.
前述の通り,C-26マウスにおいて,グルタミンの投与は癌性筋萎縮を抑制しないことが明らかとなった.ただし,神経―筋電気刺激との併用により効果が得られる可能性が残されていることから,当初の予定通り,平成28年度には,C-26ルマウスにおいて,グルタミン投与と神経―筋電気刺激の併用が癌性筋萎縮に及ぼす影響を検討することとする.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件)
Ann. Rheum. Dis.
巻: 74 ページ: 1907-1914
10.1136/annrheumdis-2013-205007.
Skeletal Muscle
巻: 5 ページ: 20
10.1186/s13395-015-0045-7.
Physiol. Res.
巻: 64 ページ: 935-938
理学療法学
巻: 42 ページ: 819-820