本研究は乳幼児の音韻認識能力を知る課題を作成すること、その課題を用いて縦断的な調査を行い、音韻認識の達成度と構音の獲得状況を比較し、構音発達に音韻認識が影響するのかを明らかにすることを目的とした。本年度は刺激音数の弁別課題を作成し2名に実施した。対象は聴覚障害や運動、言語発達の遅れがない7ヵ月(男児)と1歳8ヵ月(女児)の2名.刺激音は複合音(200Hzの鋸波)と合成した言語音/ma/を用い、刺激音間隔を100msにして1単位から4単位の刺激音系列を作成した.対象児にはスピーカで刺激音を提示し、条件付け振り向き法で反応を捉えた。結果は、複合音の1単位から3単位では、7ヵ月児は5施行中3施行、1歳8ヵ月児は8施行中5施行で振り向き反応があった。/ma/の1単位から4単位では、7ヵ月児は動きを止める反応が1度だけあった。1歳8ヵ月児は/mama/といった音声模倣や発話が多く、刺激に対する行動反応は認めなかった。以上より条件付け振り向き法を用いた刺激音数の弁別の観察で,7ヵ月児は1単位と3単位の違いを弁別していることが確認された。語音弁別課題は「あぱ」と「あば」、「あさ」と「あしゃ」のペアを作成し、刺激音数の弁別課題と同じ2名に実施した。対象児にはスピーカから提示したが、振り向き反応や刺激に対する明らかな反応は認められなかった。 語音弁別能力に関して小学生を対象に、語音弁別検査、脳波検査を実施した。対象は構音障害児群7名(平均年齢8歳6ヶ月)と構音障害がない群10名(平均年齢8歳6ヶ月)。語音弁別検査は7種類の音のペア(「あぱ」と「あば」、「あさ」と「あしゃ」、「あた」と「あか」、「あた」と「あさ」、「あら」と「あだ」、「うつ」と「うちゅ」、「いき」と「いき」の歪音)を用いた。両群とも正答数は7~10で明らかな差は認められなかった。事象関連電位の結果は現在解析を進めている。
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