高齢期における運転は自立した生活を送るために重要な要素であり、運転の中止が日常生 活の自立度を低下させることが指摘されており、健康長寿の延伸のために運転寿命の向上は 重要である。実際、本プロジェクトに関連するデータや先行研究から、運転の中止により生 活機能低下や要介護認定のリスクになることが明らかにされてきた。高齢化率の上昇に伴 い、高齢ドライバー数は近年著しく増加し、75 歳以上の高齢者に限っても約425万人が免許を保有している。高齢期における視機能、運動機能、認知機能の低下は運転技能の低下を招き事故の危険性が上昇するため70歳以上では高齢者講習が義務付けられ、75 歳以上では講習予備検査(認知機能検査) も運転免許証の更新時に義務付けられた。検査の結果が悪く、認知症と診断されると運転免許の取消し、もしくは停止処分がなされる。その中で着目されているのが、MCI高齢者である。MCIの状態は、認知機能だけでなく視機能も低下することが報告されており、安全運転に不可欠な機能の低下が生じていると可能性が高いということである。しかし、安易な運転中止は活動制限を招き、認知症発症リスクの上昇にもなりうる。運転寿命延伸の知見を得るため、まずは当該研究課題において、MCIドライバーのどのような機能が低下することが運転技能低下と関連するのかを検討する。本研究事業では、地域高齢者3015名に大規模健診を実施して、その中からMCIドライバーを抽出し、研究への参加・同意を求めた結果、237名のMCIドライバーのデータを集めることに成功した。これらのMCIドライバーについては、複数の視機能検査、および脳画像データの計測を行った。
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