研究課題/領域番号 |
15K12594
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
錦戸 信和 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (60610409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 吃音 / 社交不安障害 / VBM / イメージ |
研究実績の概要 |
心理状態の脳への影響を調べるために、脳の形態のMRI撮像および心理状態を調べるアンケート調査を実施した。アンケートには、LSAS-J(社交不安障害の程度の自己評価尺度)、S-24(コミュニケーションに対する感情・態度面の自己評価尺度)、PHQ-9(うつ病の自己評価尺度)の三種類の自己評価尺度を用いた。これらの尺度は、値が大きいほど程度が重いことを意味する。被験者は、吃音のある成人(PWS)14名、吃音のない成人(PNS)14名とした。 脳の形態のMRI画像とアンケート調査結果に基づき、Voxel-based morphometry(VBM)による解析を行い、PWSとPNSそれぞれに対して、各アンケート結果の値と容積が相関する脳の領域を調べた。その結果、PWSの場合、LSAS-Jの結果と負の相関がある領域として左被殻が、S-24の結果と正の相関がある領域として右上前頭回、右中前頭回、右中後頭回、右側頭極、右紡錘状回、右被殻が示唆された。一方、PNSの場合、相関のある領域はみられなかった。これらの結果から、PWSの場合、心理状態が脳に大きく影響する可能性が考えられ、発話イメージを評価する際は、心理状態も考慮する必要があると考えられる。 また、発話をイメージした際の精度を客観的に評価する基準を作成するための予備実験を行った。予備実験では、文章を複数の文節に分けて提示し、その提示に対してMRI装置内で、黙読、音読、音声のイメージ、発話運動のイメージを被験者が行い、その際の脳活動および生体信号・生体反応を計測した。生体信号・生体反応には、発話に関連して変化する可能性のある呼吸信号、脈波信号、瞳孔径の大きさを用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
吃音のある成人は、社交不安障害を合併する割合が高いという報告[Blumgart et al., 2010]があり、社交不安障害の程度を含めた心理状態が脳の形態や活動に影響する可能性があるため、心理状態に関するアンケート調査を実施し、脳への影響を調べた。これらは、今年度の計画には含まれていなかったが、今年度実施する予定だった作業に優先して行ったため、計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に行った、発話をイメージした際の精度の評価基準作成のための予備実験に関して、今年度は、その結果解析をすすめ、評価基準を作成するための実験課題や、計測する生体信号等の検討を行う。 検討結果に基づき、実験タスクや計測する生体信号を修正した本実験を、吃音のない人を被験者として行い、発話イメージの評価基準を作成する。 さらに、吃音のある人に対しても同様の実験を実施し、評価基準を検討する。 また、昨年度行った、脳の形態と心理状態のアンケート結果とのVBMによる相関解析の結果をまとめ、学会発表および学術雑誌への論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
心理状態のアンケート調査の実施および、脳の形態とのVBMによる相関解析の実施に伴い、発話イメージの評価基準を検討するfMRI実験の実施回数が少なくなり、その結果、MRI利用料や謝金の支出が減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分は、今年度、発話イメージの評価基準を検討するfMRI実験を実施する際の、MRI利用料および謝金として使用する。
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