研究課題/領域番号 |
15K12596
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
和田森 直 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (60303179)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光音響分光法 / 骨導 |
研究実績の概要 |
可聴信号を耳周辺軟骨から振動として耳内へ伝えると可聴信号を知覚できる現象を利用した骨導振動装置が開発されている。これに対して、断続光の吸収に伴う発熱により、試料内部で振動が発生する光音響効果を応用した骨導音声情報提示装置を提案し、機器開発に向けた基礎検討を行った。本提案の特長として、試料内部で振動が発生することから、気導音を発生させることなく、骨導を介する知覚と音波の物理特性や聴覚感度特性の関係を明確にできる。この光音響効果を利用して耳周辺軟骨を加振する骨伝導音声情報提示装置を開発し、その性能評価を続けている。ここで、骨導受話器の評価には、日本工業規格に示されている基準等価いき(閾)値の力のレベルが用いられる。これは、骨導受話器を規定された試験条件のもとでメカニカルカプラに圧定し、乳突部上に装着したときの正常者の聴覚いき値に相当する電圧レベルで駆動したときに、規定の特性をもつメカニカルカプラに伝達される振動の力のレベルである。そこで、本提案装置の評価として、耳周辺軟骨に類似したゴム・シートからPA信号が発生すること確認し、測定したPA信号の加速度とIEC 60373 に規定されているメカにカプラの機械インピーダンスとから力のレベルを算出した結果、規定された周波数範囲において、PA信号の力のレベルは、日本工業規格に示されている骨導受話器を乳突部に装着した場合の基準等価いき(閾)値の力のレベルを上回った。この際の照射強度は、通常の環境下で人体に照射しても有害な影響を与えることがないレーザの放射レベルである最大許容露光量を下回っており、PA効果を利用した骨導補聴器の可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光源装置が不調につき、調整中のため
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今後の研究の推進方策 |
光音響効果を応用した骨伝導音声情報提示装置の評価 日本工業規格では、純音オージオメータにおける骨伝導受話器をメカニカルカプラにより校正する方法について規定がなされている。次の規定に基づいてPA効果を応用した骨伝導音声情報提示装置の評価を続ける。これまでに、評価項目(1)、(2)については研究実績の概要の通りである。
(1) 125-4000Hzの音圧レベル (2) 4000Hzを超える周波数の音圧レベル (3) 全高調波ひずみ(4) 周波数変化率 (5) 持続時間 (6) 周波数応答 (7) マスキングの遮断周波数 (8) マスキング-36dBレベル (9) 125-4000Hzのマスキングレベル (10) 250-4000Hzの振動の力のレベル(11) 4000Hzを超える周波数の振動の力のレベル (12) レベルの変化率 (13) 聴力レベル調整器の直線性 (14) 上昇及び下降時間
さらに、本提案装置に適応信号処理を加え、機器のあて方や場所によって音声が不明瞭になる問題に対して、検出した光音響信号と音声信号との関係性から内部の伝達特性を推定することによって、適切な音量や周波数特性に補正し、比較的明瞭に音声を知覚できることを確認し、臨床研究への可能性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに利用を予定していた光素子のコネクタ形状が現有の装置に対応せず、国内では加工が困難なことが判明したため、素子の選定から始めることとなったため。 また、これまで使っていた試作器の光素子に不具合が発生したため、それに対応する必要があったため、再選定へ十分な時間を割けなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、国外3社の光素子に候補を選定した。 素子を入手次第、研究を再開する。
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