研究課題/領域番号 |
15K12599
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
石田 健司 高知大学, その他部局等, 教授 (10274367)
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研究分担者 |
中平 真矢 高知大学, 医学部附属病院, 言語聴覚士 (10748817)
永野 靖典 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (30380372)
町田 佐和 高知大学, 医学部附属病院, 作業療法士 (80771352)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 基本チェックリスト / 認知症 / 2次介護予防 / コグニスタット / 長谷川式認知機能評価 / MMSE |
研究実績の概要 |
高知県室戸市で行政の抽出した認知症の2次介護予防対象者に、本研究への参加案内を出した。同意し、エントリーした方は25名であった。その25名に、長谷川式認知機能評価(以下HDS-R)とMinim-Mental State Examination(以下MMSE)を評価した。両検査が共に30点満点の方は16名、残りの9名はHDS-R、MMSEのどちらかが30点未満であり、今回の調査対象とした。 訓練前の評価点数の組み合わせ(HDS-R,MMSE)は、(26,27)(26,26)(30,26)(29,23)(28,24)(29,30)(29,29)(28,28)(28,26)であった。認知症cut-off値を、HDS-Rは20/21、MMSEは23/24とすると、1例がMMSEで23点であり、認知症が疑われた。 次に、これらの症例にCOGNISTAT(以下コグニスタット)を評価し、見当識、注意、言語(理解・復唱・呼称)、構成、記憶、計算、推理(類似・判断)の10評価項目について調査した。その結果、標準値以下と評価された症例は、見当識1例、注意7例、言語(理解)9例、言語(復唱)0例、言語(呼称)9例、構成9例、記憶3例、計算9例、推理(類似)9例、推理(判断)9例であった。言語(理解)、言語(呼称)、構成、計算、推理(類似)、推理(判断)の6項目は、全例感度良く抽出されていた。 ウォーキングを中心とした運動介入を行った。3名が訓練から脱落した。残り6名の訓練前後の評価は、HDS-Rは改善2例、悪化3例、不変1例で、全体では、訓練前平均点28.0点が訓練後26.8点に低下した。MMSEは改善4例、悪化1例、不変1例で、全体では、訓練前平均点26.0点が訓練後27.2点に高くなっていた。コグニスタットは、注意で向上2例、見当識、記憶で、それぞれ1例ずつが向上していた。残りは不変であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の目的の一つは、現在汎用されているHDS-RやMMSEでは認知症と診断されない人に対し、コグニスタットを用いて評価することで、軽度認知障害者をより感度よく抽出できるかを検証することである。今年度は、高知県室戸市で抽出された2次介護予防対象者に、HDS-R、MMSE、コグニスタットを評価した。HDS-RとMMSEでは認知症と評価できなかった症例にコグニスタットを導入することで、見当識、注意、言語(理解・復唱・呼称)、構成、記憶、計算、推理(類似・判断)の10評価項目のうち、言語(理解)、言語(呼称)、構成、計算、推理(類似)、推理(判断)の6項目が、感度良く評価されていることを実証できた。 また、一般に推奨されている「ウォーキング」を中心とした運動が、認知機能の改善に有用であるか、地域の介護予防に繋げていける実用的なものであるかを調査した。コグニスタットは、感度よく軽度認知障害者を検出でき、認知機能のどの項目に問題があるかを詳細に評価できることが分かった。 次年度から行う認知機能で失った分野に特化した指導・訓練の評価に、導入できると思われた。 症例の数は少ないものの、1年目の目的は達していて、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、評価地区を、高知県室戸市に加えて、宮城県栗原市でも評価を行う。 新規に行う宮城県栗原市においては、1年目に行った室戸市と同様の対応を行い、同地域の軽度認知障害者の状況を把握し、ウォーキングを中心とした取組みの意義について検証する。その対象地区は、宮城県栗原市若柳地区(人口約12,900人、高齢者人口約4,100人:高齢化率31.8%)である。 同時に、2年目の室戸市では、通常行われているウォーキングを中心とした取組みは行わず、見当識、注意、言語(理解・復唱・呼称)、構成、記憶、計算、推理(類似・判断)の10評価項目に特化した訓練を行い、その効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査・情報収集のための旅費を計画していたが、他の経費で賄えた。 また、調査補助者への謝金については、研究協力者の確保ができ、謝金の一部を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、学会への参加のための旅費に使用することや、調査補助者への謝金を計画している。
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