X線やNMR現象を応用した頭部断層画像によって、本来は見ることのできない皮下組織の構造に関する手がかりを得ることができ、加齢が顔面に及ぼす現象を明らかにできるようになった。一方で、専門知識を有する医師にとっては、高価な画像診断装置を駆使して得られた断層画像を読影することで、皮下の筋肉や脂肪の変化を知ることは容易であるが、専門知識のない一般の人にとっては依然として難しい。現在、スマートフォンに搭載されたカメラを使用することで、自分の顔を簡単に撮影することができる。スマートフォンには画像処理プログラムが内蔵されており、画像変換や画像強調、情報抽出を行う高度な機能を利用することができる。そこで、断層画像から得られる皮下組織の構造と顔を正面から撮影して得られるカメラ画像との間の関係が明らかになっていれば、カメラ画像上の特定の2次元位置に関して、その皮下の情報を引き出すといったことが可能となる。本研究では、大量の顔画像から学習した統計モデルをカメラ画像にフィッティングすることによって、顔部品の2次元位置を取得し、あらかじめ対応付けておく皮下組織の構造の情報(特に、筋肉の位置や体積)を取得する手法を提案することを目的とした。 提案法では、まず、カメラ画像から検出された顔領域に対して、目や口といった顔部品の輪郭点群から成るConstrained Local Models (CLM)をフィッティングし、これらの輪郭点群の座標を取得する。次に、目及び口、顔の輪郭点座標からシワの存在する頬領域を決定し、頬領域に対してShape From Shaping法により陰影の変化から奥行情報を推定する。頬領域のすべての列について奥行の極大をとる位置を検出し、それらを連結することで、鼻唇溝の稜線を推定し、かつ、その端点をもって、皮下に大頬骨筋の停止する位置を推定することができる。
|