本研究の最終目的は、認知症高齢者の排尿ケアモデルを開発することである。30年度の測定目標は10名としたが、28年度及び29年度とは異なる施設の研究協力を得て、入所中の認知症高齢者4名の測定ができた。年齢は平均89歳、体重は平均42.2㎏、要介護度3~5であり、排尿・排便介助は一部介助で他動的定時誘導ではなく、本人の自由意志でトイレもしくはポータブルトイレでの排泄を行っていた。いずれもおむつもしくはパッドを着用しており排尿障害がみられた。測定は、日常生活の制限はせず、入浴時を除く24時間以上72時間以内の膀胱内尿量を連続測定した。膀胱内尿量測定は、超音波により非侵襲的に測定できるLilium®α-200の粘着プローブを膀胱直上の下腹部に研究者あるいは介護スタッフの協力により貼付し測定した。測定機器の不具合が相次ぎ、1名を除く3名に1~2回再測定を実施した。認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ~Ⅲであった。膀胱内尿量の測定の結果、昼間排尿は10回以上みられ、夜間排尿の回数は2~3回と頻尿であり、排尿間隔および排尿回数は測定する前と同等であり測定による影響は見られず、排尿時間帯は定時的であった。残尿量はいずれも50mL以下であり、おむつもしくはパッド内での尿失禁が昼夜問わず数回見られ、2日以上排便がみられない便秘症状や排ガス低下もみられた。飲水においては施設にてコントロールされているものの1000mL未満に留まった。さらに、排泄に影響を及ぼすと考えられる利尿や尿量や便通を調整する薬剤や、睡眠障害を緩和する睡眠導入剤、精神安定剤など合計3剤~7剤を服用しており、多剤併用による有害事象と排泄障害の関連が示唆された。不必要な尿失禁や便秘と内服薬の副作用の見直しにより、適正な排泄ケアの提案ができると考える。
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