研究課題/領域番号 |
15K12614
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
原田 治行 鹿児島工業高等専門学校, 高専, 教授 (80192285)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒューマンインターフェイス / ALS患者 / バイノーラル・ビート |
研究実績の概要 |
本研究は、当機関の生命倫理審査委員会の承認を平成27年6月に得てから、被験者として健康な20歳から21歳の3人の男性の協力を得て開始した。 「γ波帯域の脳波を多チャネルで測定し、相関係数ベクトルをユークリッド距離によるパターンマッチング法で分類する方法」の実験を科研費で購入した生体信号収録装置PolymateⅡ AP2516で行った。電極を前頭葉、側頭葉、頭頂葉および後頭葉にそれぞれ左右2か所ずつ、計8か所に配置し、シールドルーム内で、右手、右足、左手、左足運動想起の4つのメンタルタスクの脳波をそれぞれ60秒間測定した。前半の30秒間のデータから各電極間の相関ベクトルをもとめて4つのテンプレートデータとし、後半の30秒間のデータをテストデータとして4つのテンプレートとのユークリッド距離が最も小さいテンプレートを判別結果として判別率を求めた。その結果、4~100Hzの帯域では、データ数は少ないが平均で44%、標準偏差11.0%であった。一方、γ波帯域では平均で64%、標準偏差5.0%であった。また、一人の被験者が左手の運動想起が上手くできずに認識率が13%と極端に低かったため、試みとして左手運動想起を除いた結果、平均で75%、標準偏差5.4%であった。 認識率を向上させ、標準偏差を減少させるために、運動想起を上手くできるようにタスク実行後の相関ベクトル値をリアルタイムで被験者にフィードバックして訓練するシステムを作成中である。同時に運動想起の種類の選定、及び電極の位置の選定も必要である。 また、バイノーラル・ビート音を聞いた時に、γ波帯域の脳波が出やすくなるかどうかの予備実験を行った結果、平常時に比べてγ波の脳波全体に占める割合が増加することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画は、「1.本研究に対して、鹿児島工業高等専門学校生命倫理審査委員会の承認を得る。 2.本研究に必要な脳波などの生体信号を安全に測定するために製作された生体信号収録装置PolymateⅡ AP2516を購入する。 3.研究に必要なバイノーラル・ビート装置を文献を参考に製作する。 4.申請者の先行研究である「γ波帯域の脳波を多チャネルで測定し、相関係数ベクトルをユークリッド距離によるパターンマッチング法で分類する方法」を生体信号収録装置PolymateⅡ AP2516を用いて検証実験をする。 5.シールドルーム外の一般的な環境雑音下で同様の実験を行い、判別率とそのばらつきの度合いを調べる。」であった。 1~4については、ほぼ計画通りに遂行できた。ただし、3については文献を参考にしてバイノーラル・ビート装置を製作したが、最終的にはステレオチャネル出力を持つ波形発生ソフトウエアを用いて左右のチャネルから周波数の異なる音を発生させる方法の方が自由度が大きいために、ソフトウエア方式を採用した。4については、実験の結果、認識率の向上と標準偏差の減少を目指して、タスク実行後の相関ベクトル値をリアルタイムで被験者にフィードバックして訓練するシステムを作成中である。また、運動想起の種類の選定、及び電極の位置の選定が課題として残った。5については、シールドルーム内でバイノーラル・ビート音を聞いた場合の判別率の変化を確認したうえで、シールドルーム外の実験を行うことが最終目標であるために、平成28年度に実験することにした。 平成27年度の計画にはなかったが、平成28年度に実施予定のバイノーラル・ビート音を聞いた時にγ波帯域の脳波が出やすくなるかどうかの予備実験を前倒しして行った。 以上により、総合的に「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成27年度で課題として残った「タスク実行後の相関ベクトル値をリアルタイムで被験者にフィードバックして訓練するシステムの構築」を最初に行い、運動想起の種類の選定、及び電極の位置の選定を実施して認識率の向上を図る。 2.平成27年度に実施したバイノーラル・ビート音を用いた予備実験を本格的に実施してγ波帯域の脳波が出やすくなるバイノーラル・ビート音の基本周波数と左右の周波数差を求める。 3. 2で最もγ波が増える基本周波数と周波数差を求めた後、バイノーラル・ビート音を用いてγ波帯域の脳波が出やすくなる状況下で、1で選定した電極と運動想起を用いて健常な被験者に対して「γ波帯域の脳波を多チャネルで測定し、相関係数ベクトルをユークリッド距離によるパターンマッチング法で分類する方法」の実験を、シールドルーム内と一般的な環境雑音下で実施する。 4.一般的な環境雑音下で複数の健常者に対して良好な結果が得られれば、「日本ALS 協会」や「難病支援ネットワーク」などに協力を仰ぎ、ALS 患者の協力を得て検証実験を行う。 5.以上の結果を取りまとめて、学会等で成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費における消耗品の購入で、前年度(平成27年度)末の未使用額が0円になる予定であったが、5円の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)に請求する額の消耗品代に加えて使用する。
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