研究課題
最終年度は,本研究での最終目標である,臨床現場での重度肢体不自由者の姿勢計測を実施し,その運用と計測情報の評価を行った.具体的には,重度肢体不自由者を模擬した健常者1名を被験者とした検証実験と模擬対象とした高位頸髄損傷者1名に対して,電動車椅子操作に用いるジョイスティックコントローラの設置位置に対するジョイスティック操作可能範囲を計測を行った.臨床現場での実用可能性を評価するため,高位頸髄損傷者の運動計測は実験室ではなく,被験者の居住地付近の会議室で実施した.これにより,実験室の外でも準備撤収を含めて十分実用的な姿勢計測が実現可能なことを確認した.被験者は車椅子に座り,膝の高さに合わせた電動車椅子コントローラのジョイスティックに対して腕を軽く伸ばした状態で握った.このコントローラ位置を基準位置とし,基準位置とそこから前後,左右,上下の8方向に腕の長さの10%分移動させた位置の9位置において,ジョイスティック操作可能範囲がどのように変化するのか計測を行った.ジョイスティック操作方向は,前後左右とそのそれぞれの中間値の8方向をランダムで指示し,ジョイスティックの平均到達位置を取得した.これにより,本研究で対象とした高位頸髄損傷者は肩の挙上および頸の曲げの2自由度の入力情報を水平平面の2自由度方向への変換する能力があることと,その操作可能範囲を最大化するコントローラ位置があることがわかった.これらの結果より,手動による電動車椅子操作が不可能と思われていた上位頸髄損傷者でも,正しく操作能力を評価することができれば手を用いたジョイスティック操作が可能な場合もあること,またその可能性を定量的に評価できることを示した.これらをもって,本研究の目的である「重度肢体不自由者に実用可能な運動計測システムの開発」は実現できたと考える.
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Geriatrics & Gerontology International
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10.1111/ggi.13299