視覚障害者が自らのペースで読み書きできる文字として知られる点字であるが,現在,紙以外の素材に無色透明な紫外線硬化樹脂インクで印刷した点字(UV点字)が普及している.しかし,現在の製法(スクリーン印刷方式)では点の高さが不十分で印刷後の仕上がりが悪いことや点字学習者にとって触読し易い文字サイズが明らかにされていない点が問題視されている.そのような状況下において,現状では効果的な対策法は考案されていない.これでは識字率が低下する可能性がある.確かに,現在の製法であるスクリーン印刷方式は,印刷業者が新たな設備投資を必要としない製法である.しかし,点の高さが低く印刷後の仕上がりが悪いことは大きな問題である.そこで本研究では,新たなUV点字の製法として,シリンジと一体化したノズルを垂直方向に上下させずに紫外線硬化樹脂インクを高速かつ非接触で安定して噴射する方式でUV点字を作成できる新たな装置を開発した.この製法に含まれる最大のチャレンジング性は,高粘度の紫外線硬化樹脂インクを高速かつ被印刷素材に非接触で安定して塗布できるようにすることであった.最終年度は,UV点字の触読性の評価実験の結果をまとめると共に,今回開発した装置により作成した点字教材や触知案内図を用いた触読性評価実験を行った.これらの研究成果は,国内外の学会で発表を行い,当該領域の関係者からも高い評価を得ることができた.今後は,この装置を用いて現場のニーズを踏まえた点字や触知案内図の教材の試作を手掛ける予定である.
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