学習指導要領では、体育は小・中・高12年間の一貫したカリキュラムとなり、ゲーム、ボール運動、球技では、ゴール・ネット・ベースボールの3つの「型」が示された。しかし、低学年に示された鬼遊びからの系統性や3つの型の関係は示されておらず、教材及びその配列を明示することは学校現場における喫緊の課題である。 体育授業の大半をしめる球技は、体育の内容としての歴史は浅く、カリキュラム体系や授業のあり方の検討が不十分であると指摘されている。球技の導入に位置づけられている鬼遊びは、学校現場では運動量の確保のために導入され、必ずしも状況判断を学ぶ教材となっているわけではない。近年強調されるボールを持たないときの動きに注目した戦術学習であっても、作戦の遂行の前に、変化するゲーム状況への対応力である「意思決定」が身に付かなければ、仮に「技能」を身に付けさせてもゲームで活躍を期待することはできない。自らが意思決定し、行動選択する機会が保障された児童が熱中することのできるゲーム、複雑な既存のスポーツ種目に替わる体育授業用の教材開発によって、学習の機会を保障することがゲーム・ボール運動領域に求められている課題である。 本研究では、既存のゴール型種目のゲーム構造の検討と再解釈を行い、鬼遊びを含むゴール型の下位概念提示と意思決定の契機・対象の構造化、ゴール型の系統的教材の開発と検証を行い、新たなスコープとシークエンスを明らかにした。
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