本研究は、学校体育の授業の質的保証をするために、体育科の授業における授業内容・学習過程、教師行動、学習活動等の授業データを、タブレットPCや携帯スマートフォンから簡易に入力でき、即時に集計・分析して結果を数値やグラフなどの視覚情報でフィードバックできるアプリを開発して、それを学校現場の体育科授業研究等に有効に活用する方法を実証することを目的とした。そのために次の3つの課題に取り組んだ。1.これまでの体育科授業用に実績のある組織的観察法に対応する授業分析用アプリを開発する。2.大学・大学院の模擬授業において開発したアプリを試験運用して実施上の課題を検討する。3.研究連携している研究校での体育科授業研究を対象に開発したアプリを実用して教師研修における活用法を検討する。 平成28年度は、開発した授業分析アプリ「Lesson Study Analyst for Physical Education」を模擬授業や校内研究授業に実用して次のような改良を行った。(1)アプリの実用を通して入力・分析しやすいボタン配置に変更した。(2)分析した結果と映像データをリンクした「プロジェクト保存」の様式を追加した。(3)国際学会での発表に対応するために英語版を開発した。(4)著者が開発・運用する「e-Learning授業評価システム」とアプリとで分析データを連携できるようにシステムを変更した。 これらの改良によって都内の複数の小学校で授業分析アプリを運用することができた。また茨城県北茨城市教育委員会との共同研究で授業アプリを使って校内研究授業の教員研修に活用することができた。これらの試みを平成28年6月にアメリカ・ワイオミング大学で開催されたAIESEP2016国際学会や平成28年12月に台湾・国立台湾師範大学で開催された台湾体育学会・第5回東アジアスポーツ教育学会で研究成果を発表することができた。
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