研究課題/領域番号 |
15K12630
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
七澤 朱音 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10513004)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 校内研修 / 再生刺激法 / リアルタイム意思決定 / 同僚性 |
研究実績の概要 |
研究2年目に当たる本年度は、(1)自らの教授行動の元になった意思決定を“授業後”に語る「再生刺激法」と、自らの行動の意思決定を“授業中”に振り返る「リアルタイム意思決定」による校内研修、(2)「指導者・スーパーバイザー・体育科教育学の専門家」の三者が授業中リアルタイムに情報交換を行いながら即時的に授業の修正を行っていく「リアルタイム意思決定」による校内研修、以上の二つを実施した。両実践とも、全員の発話をICレコーダーとipodに録音し、それらを逐語記録して、吉崎(1988)を元にしたカテゴリー法により分類した。日程と対象単元は、(1)平成28年7月~9月に実施した「ベースボール」、(2)平成29年1月~2月に実施した「バスケットボール」であった。 発話分析の結果、(1)の“授業後”に振り返る方法では、学習内容に関連した教授方法に関する内容が語られる一方で、“授業中”に語る方法では、その時々に目の前で生起する出来事や児童の取り組み状況に関連した内容がより多く語られた。これは、“授業後”の意思決定では、第三者的に授業の成果を捉えながら学習内容に関わった気づきが生まれるが、“授業中”の意思決定では、まさに今そこで起こっている事象に対する教師の意思決定が発話として出現するからだと考えられた。(2)では、授業者による即時的な修正が可能だった事柄と不可能だった事柄が明らかになった。示範方法・場所や児童の作戦タイムにおける授業者のかかわり方は、スーパーバイザーの介入により大きく変化した。特にスーパーバイザーの介入により、試合状況の見取り(チームがそれぞれどこに苦戦しているか)がより明確になった。ただ、“学習内容に関わる即時的な修正”に対する対処は困難であった。(1)で得られた結果と類似して、学習内容といった授業の「内容的条件」に関する修正を“授業中”に行うことは大変難しいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)は附属学校で実践し、本研究の方法論と検証方法の是非を確かめる上で重要なものとなった。当初、授業の導入からまとめの全てに対する教師の発話を分析する予定だったが、小学校に所属する指導者の限られた空き時間(授業の合間)の中で再生刺激法を実践せざるを得なかったため、分析対象を導入とまとめを除く「運動学習場面」に限定した。実際はこの修正が功を奏して、再生刺激法とリアルタイム意思決定それぞれの方法論の良さと課題が明確になった。その良さについて、再生刺激法では運動学習場面における学習内容の適否を客観的に捉えることができ、リアルタイム意思決定では運動学習場面における教師の暗黙裏に行われる意思決定を顕在化させることで授業者自らの授業中の指導観を改めて確認することができた。課題について、再生刺激法は振り返るのに授業と同じだけの時間をかけるため、時間のない学校現場の教師に適用していくのは難しいこと、リアルタイム意思決定は授業時間内に研修が終わるため校内研修に取り入れやすいが、「児童の技能の把握」と「技能的助言」に関わる認識と修正が多くなってしまうことが挙げられた。(2)は、十分な検討時間も用意することができ、校長や当該クラスの学年主任などの理解・協力も得られた中で実践できた。授業者(講師歴含む2年目)もスーパーバイザー(教務主任)も体育科教育学を専門として卒業・修士論文を書いており、体育授業をより良くしていこうという姿勢や目標が合致したのも大きかった。本研究の遂行には、関わる三者の信頼関係が重要である。つまり、授業者には、他者の助言を肯定的に受け入れつつ自らの授業を改良していこうという姿勢が必要不可欠であり、スーパーバイザーには授業者と共に良い授業を創っていこうとする姿勢がなければならない。本研究では、実践に対する両者の姿勢に齟齬が生じなかったため、成功裏に研究を遂行できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は教務主任がスーパーバイザーとなって授業改善に関わった。しかし、教務主任となると若手の教師が校内研修を依頼するにもハードルが高い。よって、最終年度となる次年度は、スーパーバイザーを教務主任より身近な教員に設定し、実践していく。例えば所属する学年の主任、隣の学級の担任など、より近くにいて、あまり背伸びをせずに校内研修を依頼できるようなしくみを構築していく。 平成29年5月以降に習志野市立の表現運動研究校に入り、この実践を行うことが決まっている。また、船橋市立の中学校において、T1(主に授業を進行する授業者)・T2(補助)・T3(補助)が無線機を着用し、リアルタイムに情報交換を行いながら授業に対する共通認識を持ちつつ、授業を修正していく実践も予定している。 最終年度は以上の様に、リアルタイムに授業を修正していく校内研修をより身近なものにするための方策を練り、実践していく。そして、最終的には論文を作成し、研究をまとめていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、新しい機材の導入により授業者に対する説明や操作の必要性が生じたため、研究者が自身の大学における授業などの合間をぬって、全ての授業に直接赴いてデータ収集を行った。よって、当初予定していた「インターネット接続を使って研究者が日々の授業を参観し、より早く修正点を学校現場に伝え次回の授業に生かす」という実践ができなかった。 以上の理由から今年度は、協力を仰いだ学校側に時間割の変更をお願いし負担をかけてしまった。確かに、研究者が現場に赴き校内研修にその場で直接関わることには利点も存在する。しかし、研究者の都合に合わせて学校の予定を変更させることは本末転倒である。よって、次年度は、学校におけるインターネット環境(無線による動画配信)を整えることにより、研究者の都合に併せて時間割を変更させるのではなく通常の時間割のままで授業を実施し、研究者がより多くの授業を参観し、効果的な研修を支援していく。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、まずインターネット環境の整備を行う。無線LANの整備を行い、授業が行われている様子を大学の研究室にいながら参観できるようにしていく。また、それだけでなく、授業の前後における教師の悩みや教材研究の方法や手立てに関する疑問を、なるべく即時的により多く解消できるようにしていく。校内研修において研究者が現場に赴くことができない場合は、テレビ電話などを用いて、その討論会に参加する。情報のやりとりに関してはメールという手段もあるが、メールを開いて内容を確認し返信したり、相手がそれをあけたりするまでにタイムラグが生じるため、テレビ電話などを使ってより早く手立てを返していく。 また、三年間の研究を論文にまとめるため、参考とする図書や論文の購入も必要である。分析ツールも、データのより深い読み取りには必要となるであろう。これらを踏まえて、最終的に学術論文として投稿する。
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