研究課題/領域番号 |
15K12642
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小池 関也 筑波大学, 体育系, 准教授 (50272670)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動力学的貢献 / 即時フィードバック / 動作生成メカニズム / 高速スウィング動作 / センサー計測 |
研究実績の概要 |
疾走中の下胴,大腿,下腿,足部の各セグメントに加速度および角速度を計測可能な慣性センサを貼付し,逐次計測されるセンサ座標系表記の加速度および角速度情報から幾何学的な関係式を利用して,分析開始時における遊脚の各セグメントの初期姿勢パラメータ(ロール・ピッチ・ヨー角)を同定することにより,遊脚の各セグメントの位置および姿勢情報を推定するとともに,股関節位置の加速度を推定し,この推定された動作データを用いて動力学的分析を行った. まず,慣性センサが計測した加速度および角速度は,各セグメントおよび各軸において精度が大きく異なっていた.特に,大腿および下腿の屈曲伸展軸の角速度は精度良く計測できていた.疾走動作は屈曲伸展軸回りの動きが大きく,屈曲伸展軸回りにできるだけ揺動が少ないような貼付位置および貼付方法を選択したため,その軸回りの誤差は少なくなったと考えられる.次に,推定した各セグメントの初期姿勢パラメータは,それぞれ値のずれがあるものの,実験データと概ね一致していた.さらに,推定した股関節位置の加速度は,全ての軸において概ね波形が一致していた. そして,推定された動作データに動力学的分析を行った結果,膝関節屈曲伸展角速度の生成メカニズムは,モーションキャプチャシステムを用いた実験により得られた動作データと概ね同様であり,股関節屈曲伸展トルクといった重要な因子を評価することが可能であることが示唆された.ただし,運動依存項変換前の各関節トルクの貢献の違い,膝関節屈曲伸展トルクの貢献のタイミングの違い等が見られており,推定データから全ての関節トルクの貢献および役割を評価するまでには至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慣性センサにより計測される走動作中の遊脚各セグメントの加速度および角速度から,分析に必要な各セグメントの初期姿勢等のパラメータを推定し,動力学的な分析を行うことが可能となりおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
各セグメントの初期姿勢パラメータの同定の際に,センサ貼付位置付近の生体の弾性特性によって,特に大腿セグメントなどではセンサがセグメントに対して揺動し,その信号出力にこの揺動成分が足されてしまうことを確認した.この揺動は,センサを身体セグメントに,軽量のFRP製板などを介して取り付けることによりかなり低減されるが,FRP板の小型化あるいは,この板を使用しないなど,より自由な計測を可能とするために,平成29年度では,この揺動成分を除去する手法を考案し,簡易な計測でも,より高い定量化精度を実現することを課題とする. 具体的には,センサ本体の揺動をセンサ信号から除去するために,簡易な計測によってフィルタ係数を同定可能な揺動成分除去フィルタを構成することにより,身体各セグメントに貼付した慣性センサの信号から,剛体セグメントとしてモデル化された動きの成分を抽出して,身体動作の高精度なセンシングを可能とする.これにより取り付け部位の弾性変形特性に左右されない動作計測が可能となるため,この計測系を,各種スウィング動作に適用することにより,その生成メカニズムの即時定量化および提示の高精度な実現を可能とする.このことは,今後のフィードバックにおいて極めて有用である.
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