脳が活動する際には,酸素を必要とすることはfMRIの研究からも明らかであり,運動記憶が固定する際にも重要となるであろうと考えられることから,phantom装置による力発揮学習課題(被験者はレバーを保持して真っすぐ到達運動を実施することを要求されるが,レバーによる外乱によって移動軌跡が右方向に引っ張られる。被験者は真っすぐ到達運動をしようと試みることにより,外乱に対してどのようなタイミングでどれくらい逆の力を発揮すればまっすぐ移動できるかを学習していく課題)と運動順応学習課題(中心から8方向に向かって,ターゲットが設置されており,各ターゲットまでは円弧を描くように線替えが描かれている。被験者はその円弧に沿ってカーソルを動かし,ターゲットに2.9秒以内に到達することが要求される。しかしながら,カーソルは実際の動きに対し180度の方向に動くように設定されているため,メンタルローテーションすることが必要となる。)の2つに関して酸素カプセルの影響を検討した。 いずれの課題においても酸素カプセル曝露のタイミングが重要であると考え,5群に分けて検討した。第1群は,コントロールとして酸素カプセルに曝露しない群。第2群は,酸素カプセルの曝露後,練習する群。第3群は,酸素カプセルに曝露されながら練習する群。第4群は,練習後すぐに酸素カプセルに曝露する群。第5群は,練習後30分経過してから酸素カプセルに曝露する群であった。 酸素カプセルは1時間とし,5分で1.3気圧まで加圧し,4分で減圧する時間を含む。 全く異なる2つの課題を実施したが,両運動課題共に5群間の成績に有意な差は見られなかった。このことから,酸素の過供給と運動学習固定には関係性がないか,もしくは1.3気圧では群間の差を引き起こすには不十分であった可能性が考えられた。
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