研究課題/領域番号 |
15K12652
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研究機関 | 植草学園大学 |
研究代表者 |
遠藤 隆志 植草学園大学, 発達教育学部, 准教授 (80510594)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動学習 / 経頭蓋直流電気刺激 / ニューロモデュレーション / 皮質運動野 / スポーツパフォーマンス / 運動制御 |
研究実績の概要 |
経頭蓋直流電流刺激を用いて、皮質運動野の興奮性を修飾するニューロモデュレーションを適用することで運動疾患のある患者の日常生活動作や健常者の最大筋力が向上することが明らかにされている。しかし、ニューロモデュレーションをスポーツの技能向上に用いた研究はほとんどなく、その応用の可能性は明確にされていない。そこで、本研究の目的は、この経頭蓋直流電流刺激によるニューロモデュレーションを実際にスポーツの練習に用いて、スポーツパフォーマンスに及ぼす影響についてパフォーマンスの面を中心に検証し、実際のスポーツのトレーニングへの応用へと繋げることである。 本年度は、まず健常成人を対象として、経頭蓋磁気刺激で事前に調べたラケットを操作する上肢の筋を制御する脳部位に、陽極刺激、陰極刺激、および疑似刺激の経頭蓋直流電流刺激をそれぞれ与え(1.5mA、15分間)、その前後に皮質運動野への経頭蓋磁気刺激よりラケットを操作する筋から導出される運動誘発電位の変化を観察し、この刺激による皮質運動野の興奮性変化を検証する基礎研究を行った。その結果、皮質運動野の興奮性は陽極刺激後に増大し、陰極刺激後には減少する傾向が認められ、またこの変化は15分間程度継続し、この刺激のスポーツトレーニングへの応用の可能性が示唆された。また、この検証した経頭蓋直流電流刺激(1.5mA、15分間)の前後に卓球台上よりボールフィードマシンから出されるボールをフォアハンドストロークで卓球台上の的を狙って打つ運動課題を行い、その運動パフォーマンスの変化を検証した。陽極刺激後に運動パフォーマンスが向上する傾向が認められたが、現段階で、1回の刺激前後では、刺激間での大きな変化は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、陽極刺激、陰極刺激、および疑似刺激の経頭蓋直流電流刺激(1.5mA、15分間)を与えることで、ラケットスイング時に活動する脳部位においてニューロモデュレーションを実際に引き起こすことが可能であること、およびこの経頭蓋直流電流刺激によるニューロモデュレーションが運動パフォーマンスに与える影響について検証することができた。1回の経頭蓋直流電流刺激によるニューロモデュレーションでは、運動パフォーマンスに与える影響は現段階では明確に出来ていないが、実験のセットアップが完成するなど十分な予備実験が遂行され、また本実験のセッティングを整備できたため、全体的な進捗状況としては概ね順調と考えられる。今後は刺激パラメータの再検討や運動パフォーマンスの詳細な解析、および継続的なニューロモデュレーションを組み合わせた練習を行い、ニューロモデュレーションがスポーツパフォーマンスを向上させることが可能か検証する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果より、経頭蓋直流電流刺激は、ラケットをスイングする筋を制御する脳部位を修飾可能であることが明らかになったが、1回の経頭蓋直流電流刺激では、スポーツパフォーマンスを向上させることを明確にすることができなかった。このため、今後は、刺激パラメータの再検討(刺激パラメータおよび刺激のタイミング)および筋電図計測による筋活動やラケットのスイングスピードの変化など運動パフォーマンスの詳細な解析と検討を行い、また、当初の研究計画通り長期的なニューロモデュレーションを組み合わせた練習を行い、ニューロモデュレーションがスポーツパフォーマンスを向上させることが可能か検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の交付額が少なかったため前倒し請求を多めに行ったこと、および旅費および人件費の一部に関して別の研究費から捻出できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に経頭蓋直流電流刺激装置と卓球用のボールフィードマシン、加速度計などの実験に必要な機器は購入済みであり、今後は実験用の機器の購入予定は特にない。次年度は主として、被検者および協力者への謝金、消耗品、研究発表用の旅費および英文校正費などとして使用する予定である。
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