スポーツの技術向上において、自分の動きをリアルタイムに把握することは非常に重要である。自転車競技においては、これまで下肢のペダリング動作に関する研究が多くなされてきたが、空気抵抗や身体の疲労という観点から、下肢だけでなく上半身の乗車姿勢も非常に重要な要素である。本研究では、大掛かりな計測装置無しに、自転車に取り付けることの可能なセンサを用いて走行中の乗車姿勢を推定する手法を開発することを目的としている。 平成29年度は、自転車のサドル部とハンドル部に取り付けた6軸力覚センサの情報から乗車時の上半身姿勢を推定する手法の構築を行った。 まず、自転車エルゴメータのサドル下部のシートピラー、およびハンドル根本のヘッドチューブにそれぞれ6軸力覚センサを取り付け、自転車乗車時にサドル部およびハンドル部にかかる力およびモーメントの計測を可能にした。これらの6軸力覚センサから得られる力・モーメントのデータを入力とし、上半身を3リンクモデルと仮定して、これらのリンクの姿勢を推定するニューラルネットワークを構築した。提案手法の妥当性を検証するため上記自転車エルゴメータを用いた計測実験を行った。実験では、ハンドルの把持位置を変更しながらペダリング動作を行った際の上半身の各関節(腰、肩、肘、手首)位置をモーションキャプチャによって計測し、同時に6軸力覚センサによる力・モーメントのデータを取得した。実験の結果、提案手法によって6軸力覚センサデータから自転車乗車時の上半身姿勢を推定できることを確認した。
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