最終年度は、弓道と類似したスポーツであるアーチェリーをモデルに実験を行った。脳派計(EEG)を用いた様々な先行研究より、自発運動を行う際には、大脳皮質の運動関連領域から運動関連脳電位(以下MRCP)が観測されることが知られているが、実際のスポーツ動作を対象にした研究はこれまでにされていない。本研究は、アーチェリー動作を行う際の筋弛緩や収縮動作に関連する脳活動を明らかにすることを目的とした。16名の被験者(未熟練者)は、アーチェリーを40試行おこない、その際の筋活動は筋電図(EMG)を用い、脳活動はEEGを用いて評価した。得られた筋活動をもとに、EEGを40試行加算平均し、MRCPを求めた。さらに、中心から的を射た点の距離および得点も記録し、アンケートによる内省報告も一試行ごとに行った。その結果、記録の上位群は下位群に比べて大脳皮質の運動関連領域から得られるMRCPの振幅値が大きくなり、さらにより早期にonset timeが観測されることが明らかになった。これは、ある動作が熟練するに従い、MRCPの振幅値が減少するという先行研究と異なる。しかしながら、初めての動作を行う際には、高いパフォーマンスを発揮することの出来る被験者は、各々の決まったタイミングで安定的に動作を行う(ルーティンで行う)可能性が考えられる。本研究結果は、国際誌として投稿を行い、Human movement scienceに受理された。
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